ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459994hit]

■レジェンド・オブ・ゾロ、ザスーラ、クラッシュ、好きだ、プルーフ、ロード・オブ・ドッグタウン、エンパイア・オブ・ザ・ウルフ
残念ながら僕は、そのような感銘は得られなかったが、それ
は別にしても、映画は1970年代の西海岸の風景や生活を正確
に再現したもので、その部分では充分に楽しめる作品になっ
ていた。特に、渇水で各所に空っぽのプールの出現したこと
が、彼らの技に磨きをかけたというエピソードなどは納得し
て見ていたものだ。                  
Z-BOYSたちの離別から再会までの展開は、もっとドラマティ
ックに描けるようにも感じたが、事実へのこだわりがそのよ
うな歪曲を拒んだと言うところだろうか。それはそれで仕方
がないとも言えるが、ちょっともったいなくも感じられたと
ころだ。なお映画の製作には、ステイシーは元より、トニー
・アルヴァ、ジェイ・アダムスらも直接参加して、物語の再
現に協力したということだ。              
                           
『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』“L'Empire des loups”
2000年に公開された『クリムゾン・リバー』の原作者ジャン
=クリストフ・グランジェが2003年に発表した長編小説の映
画化。原作者自らの脚色により、CF監督のクリス・ナオン
が監督した作品で、主人公は『クリムゾン…』と同じジャン
・レノが演じている。                 
映画の宣伝には『クリムゾン…』が引き合いに出されるだろ
うが、本作も2つの事件が絡み合い、その陰に潜む大きな謎
に挑むという点では、シリーズと呼んでも良い作品だ。ただ
しレノが演じる主人公の設定はかなり違うものだが。   
トルコからの不法移民の女性が連続して惨殺される事件が発
生する。その事件を追う刑事ポールはトルコ移民に詳しい引
退した刑事シフェール(レノ)に協力を求めるが…    
一方、内務省の高級官僚の妻アンナは、記憶喪失の症状に悩
まされていた。それは、歴史的な出来事などは鮮明に覚えて
いるのに、夫の顔だけが思い出せなくなるというもの。その
治療に夫が紹介した精神科医は、脳の断片を取り出す検査が
必要と言い始める。                  
その恐怖におののく彼女は夫の許を逃げ出すが、その捜査に
は異様とも言える体制がとられる。そして彼女の存在が、シ
フェールの捜査と絡み合ったとき、恐怖の事件の全貌が浮か
び上がってくる。                   
かなりトリッキーな展開で、観客によっては呆れてしまう人
も出るかも知れない。しかし僕は、物語はこれくらいに大胆
な方が面白く感じられるもので、その辺も『クリムゾン…』
に共通する作品と言える。お好きな人はこちらもどうぞとい
う感じのものだ。                   
ずっと降り続く雨の描写も良かったし、パリのトルコ人街の
雰囲気も初めて見た感じのもので、何か良いエキゾチズムを
感じさせてくれた。またかなり大仕掛けのセットもいくつか
登場してそれも楽しめるものだった。          
ただし、脚本には何点か勇み足と言うか、辻褄の合わないと
ころもあって、もう少し気を使って欲しかった感じもする。
それから、原作を読んでいないので何とも言えないが、結末
は本当は違うのではないかという感じもした。僕の想像通り
なら…まあ、事情は察せられるところだが。       

11月14日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る