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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2005(コンペティション)
競馬の厩舎を経営する兄の元へ帰ってくる。そんな兄弟には
確執もあるが、もの言わぬ馬を相手にした作業を続ける内に
心も解け行く。
根岸作品は、昨年『透光の樹』で感激したばかりだし、この
作品が今回のコンペティション作品の中でも、その完成度で
群を抜いていたことは確かと言える。ただ僕としては、もっ
と粗削りで未完成な作品が好みなもので、その点でだけ多少
不満が残るものだ。しかし、だからと言ってこの受賞が素晴
らしいものであることに変わりはなく、またこの受賞によっ
て監督が海外でも認められれば、さらにそれは素晴らしいこ
とと言える。おめでとうございます。

『私たち』
一昨年の本映画祭でアジア映画賞の特別賞を受賞したマー・
リーウェン監督の新作。老婦人役のジン・ヤーチンが主演女
優賞を受賞した。
地方から上京してきた女子学生と、町中に古家を構える老婦
人。その古家の一角に半ば強引に引っ越した女子学生は、現
代っ子ぶりを発揮してことごとく老婦人と衝突するが…傍若
無人な若者と強かな老人。その対立の図式は今までにもいろ
いろの映画で描かれたと思うが、そんな中でこの作品はどち
らの言い分もそれなりに納得できて良い作品だったと思う。
それに2人の生活をいろいろな角度から、ほぼ1年に渡って
描いているのも良い感じの作品だった。
実は僕はこの作品がグランプリでも良いと思ったものだが、
確かに映像のインパクトなどは受賞作ほどではないし、演技
から受ける感銘はこちらが勝ると思うが、映画全体の完成度
では受賞作に譲るのは仕方ないという感じだろう。まあ、そ
の意味で主演女優賞というのは妥当なところかも知れない。
老若女性2人のやり取りは、間違いなく見ごたえがあった。

なお、コンペティションにはもう1本出品されているが、こ
の作品に関して僕は言葉を持たないし、監督も「分かりあえ
ない他者」がいることは想定しているようだから、これ以上
は何も言わない。

11月07日(月)
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