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On the Production
by 井口健二
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■誰がために、風の前奏曲、セブンソード、ある子供、理想の恋人.com、イド
なお、先日の『チャーリーとチョコレート工場』でも旧作の
MGM映画へのオマージュみたいなものがいろいろ見られた
が、本作ではキューザック扮する男性が旧作MGM映画『ド
クトル・ジバゴ』の大ファンということで、その映像が繰り
返し出てくる。最近この種のオマージュ(?)が目立つのは、
やはりソニーのMGMの買収を意識しているのかな。   
                           
『イド』                       
2003年3月に舞台劇『ハムバット〜蝙蝠男の復讐〜』を紹介
した劇団オルガンヴィトーの主催者の不二藁京監督による映
画作品第2作。                    
不二藁京監督とは、1996年製作の映画『オルガン』の試写で
お会いして以来、何か共感できるところがあって第2作を待
ち望んでいたものだ。その第2作が完成し、監督が拠点とす
る下高井戸の「青の奇跡」という会場で上映された。   
物語は、養豚場に併設された小工場を主な舞台にして、その
工場長と家族、従業員、またそこに転がり込んできた謎の男
や、何者かを追っている刑事などが交錯し、生と死の根源に
至るさまざまなエピソードが描かれる。         
最初に阿弥陀仏に関する親鸞の言葉が引用され、その後も繰
り返し唱えられる言葉によって人間の存在の意味が問われ続
ける。しかし映像は、そんな言葉を無視するかのように、業
に引き摺られて行く弱い人間たちの姿を写し出す。    
この映画の本当の意味を探るのはかなり難しそうだ。しかし
地下の何かを封じ込めているような巨大な螺子や養豚場やそ
の屠殺場のイメージは、観客にいろいろな想像を強いて、不
可思議な魅力を醸し出している。            
実は前作『オルガン』では、大量の内臓物がぶち撒かれて、
それだけで観客を選別しそうな感じではあったが、今回も血
液は大量に流されるものの、それが内臓物を想起させること
はあまりなく、それなりに観客の枠は拡がっている感じがし
た。                         
見て何を感じるかは観客次第だし、また何も感じなくてもそ
れはそれで良い気がする。僕自身で言えば、見終って映画を
見たという満足感は得られたし、それだけでも良いのではな
いかという感じでもある。               
そんな訳で、上映は12月16日までの毎週木曜日4時からと金
曜日7時から下高井戸駅下車で下高井戸シネマに向かう道沿
いの居酒屋「きくや」の地下「不思議地底窟・青の奇跡」で
行われている。入場料は800円、他に1ドリンクオーダーを
お願いしますとのことだ。               
送ってもらっている演劇の案内によると、最近は別役実の戯
曲なども演じているようだし、上映前に監督と話していたと
きには、韓国映画の『殺人の追憶』に感激したということだ
った。そんな中から次の作品の構想も生まれているのかも知
れない。第3作にも期待している。           
なお、前作『オルガン』は、夕張ファンタスティック映画祭
に出品された後、ヨーロッパ各地の映画祭に招待され、それ
ぞれ好評だったということで、本作もそのような上映機会を
狙っているようだ。ということで、本来の試写作品とはちょ
っと違うものだが、ここで紹介させてもらうことにした。 

09月14日(水)
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