ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459965hit]

■ヴィレッジ、ビハインド・ザ・サン、モンスター、キャットウーマン、バイオハザードII、酔画仙、ブラインド・・、ハッスル、春夏秋冬・・
レハンドロ・アメナバル監督がチリ出身で、他にも亡命中の
映画作家もいるようだが、実際にチリで製作されたチリ映画
を見るのは、僕自身は多分初めてだと思う。       
といっても、本作の内容は別にチリでなくても、東京でも成
立しそうな物語。チンピラの兄が17歳の弟を男にしようとし
てストリップバーに連れて行くが、そこで弟は1人の女性に
興味を魅かれる。一方、兄はそのバーで腕の立つところを見
せ、ボスに気に入られる。そして弟が興味を魅かれた女の正
体は…、という物語だ。                
ただし構成には少し捻りがあって、最初は弟の立場から物語
が展開され、次に兄の立場で同じ物語が語られ、最後に女の
立場から物語が進み、クライマックスへ雪崩れ込む。   
最近、このような時間軸をばらばらにした映画は流行りのよ
うだ。僕自身は知らずに見ていて最初はちょっととまどった
が、結構手際よく編集されているのでこの構成に気がつくの
に手間はなかった。それなりに語り口は巧く作られていると
いうことだろう。                   
それから、主人公の1人のグラシアという女性を演じたアン
トネーリャ・リオスが、ストリップからベッドシーンまで文
字通りの体当たりの艶技をする。日本公開はR−18指定にな
るようだが、それだけのシーンを見事に演じているのには感
心した。                       
他に、青森のチリ人妻として話題になったアニータ・アルバ
ラードが娼婦の役で出演。日本で何をやっていたかよく判る
艶技も見せている。                  
僕は、基本的にこの手のチンピラものは好きではないが、本
作はそれなりに納得できる展開で、悪くはない感じだった。
                           
『春夏秋冬そして春』(韓国映画)           
『悪い男』のキム・ギドク監督の2003年の作品。     
韓国の周王山国立公園の中の注山池に浮かぶ水上寺刹を舞台
に、春夏秋冬を人生の4つの節目に準えて描いたドラマ。 
春、幼い主人公は小動物を虐め、住職から未来に続く罪を諭
される。夏、少年の主人公は寺を訪れた女性に恋し、寺を出
て行く。秋、恋に破れた主人公は寺に戻ってくるが…。冬、
老境の主人公に赤ん坊が託される。そして春。      
ギドク監督の作品は、『悪い男』を見ているだけだが、その
人間を見つめる鋭さには心を打たれるものがあった。本作も
それは同じ、しかし前の作品では物語を暴力を中心に展開し
たのに対して、本作では大自然を背景に静けさの中に描いて
行く。                        
国立公園の大自然の中に撮影用のセットを立て、1年間を掛
けてじっくり撮られた作品。カメラは池とその周辺をほとん
ど離れることなく、季節ごとの自然の移り変わりを丹念に捉
えて行く。そしてその自然と愚かな人間のドラマとの対比が
実に見事だった。                   
なお、4つの季節の主人公はそれぞれ違う俳優が演じている
が、最も厳しかったと思われる冬の分では、ギドク監督自身
が扮して見事な演技を見せている。           
そして池に浮かぶ水上寺刹は、素晴らしくファンタスティッ
クな雰囲気を出しているが、実はこれは撮影用に作られたセ
ットで、撮影後は現状復帰のために取り壊され、現在の注山
池に行っても見ることはできないそうだ。        

08月31日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る