ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■透光の樹、ツイステッド、犬猫、ニュースの天才、クライモリ、トルク、マイ・ボディガード、80デイズ、みんな誰かの愛しい人
分に楽しんでもらえる作品に思えるのだが…。      
                           
『みんな誰かの愛しい人』“Comme une Image”      
フランスの女流監督アニエス・ジャウイの脚本、監督、出演
による新作で、今年のカンヌ映画祭に出品され、評論家によ
る星取表では第1位に輝いたという作品。        
主人公は、ちょっと太めの若い女性。彼女の父親は高名な作
家だが、母親とは離婚し、彼女とあまり年の変らない後妻と
の間に5歳の妹も誕生している。そして彼女には、父親が自
分に関心を持っていないという思いもあった。      
そんな彼女は、声楽の練習をしているが成果は芳しくない。
しかも彼女には、自分に近づいてくる人々が、自分の父親に
紹介してもらいたいからであることも不満だった。そして声
楽の先生も、彼女の素性を聞くと手の平を返したように態度
が変ってしまう。                   
そんな不満だらけの環境にいる主人公が、それでもその中か
ら幸せを見つけ出して行く。実はその幸せは、それまでは彼
女の不満に満ちた目が気づかせてくれなかったもの。こうし
て彼女の自立への第1歩が始まって行く。        
環境は違っても、こんな不満は誰もが抱えているものだし、
そんなところがこの物語に共感を呼ばせるのだろう。全体は
アンサンブル劇のような展開だが、何か大きなドラマの起き
るような作品ではない。                
しかし、淡々とした中にも暖かいものが流れている、そんな
感じの作品だった。                  

08月14日(土)
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