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On the Production
by 井口健二
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■トランスフォーマー/ONE、忘れない、パレスチナの子どもたちを、国境ナイトクルージング、火の華、フード・インク ポスト・コロナ
経たアメリカの食物事情を改めて問うたドキュメンタリー。
前作ではドラマ化されたリチャード・リンクレイター監督の
『ファーストフード・ネイション』(2007年)でも描かれたよ
うにハンバーガーやフライドチキンのようなファストフード
チェーンを中心に、食品業界の問題点を提起していた。
そして監督らは前作で全てを描き切ったと思い、続編を作る
気はなかったそうだ。ところがパンデミックが起き、その際
に全米で食品が不足する事態が生じた。その原因を考察する
中で食品をめぐる新たな問題が見出された。
その一つは食品業界の寡占化。アメリカは本来事業の独占に
は厳しい国だったはずだが、トランプが前の政権に就いてい
た時、パンデミック下で食品業界に対して独占禁止法の緩和
が執行され、寡占化が進んだ。
その一方で、前作で指摘された糖分、塩分、脂質の取りすぎ
による健康被害を上回る新たな過剰な添加物の問題が生じて
いた。それは超加工食品=Ultra-processed foods (UPFs)と
も呼ばれ、事業の寡占化がそれを増長した。
そんな新たな食品をめぐる問題点が本作では描かれる。
監督は前作を手掛けたロバート・ケナーと、前作ではプロデ
ューサーだったメリッサ・ロブレロが共同監督として参加。
さらに前作にも関ったエリック・シュローサーとマイクル・
ポーランも共同プロデューサーとして参画している。
映画では上記の他に未来の食肉への展望なども語られるが、
この辺は確か前作でも取り上げられており、さらにそれが進
化した様子も紹介される。ただそれが前作と同様に視点を動
かしてしまうのは痛し痒しの感じも持つ。
とは言え今回は上記の2点が強烈で、観客としては充分な見
ごたえを感じた。しかもそれはシステムの輸出という側面も
持ち、日本を含む全世界がその危険に見舞われている。そん
な恐ろしさも感じさせる作品だった。
前作も多方面に影響を及ぼしたが、本作もそれを上回る警鐘
となることを期待したい。
公開は12月6日より、東京地区は新宿シネマカリテ、ヒュー
マントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他にて全国順
次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観
て投稿するものです。

09月15日(日)
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