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On the Production
by 井口健二
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■風をつかまえた少年、ジョナサン(暁闇、トールキン旅のはじまり、JKエレジー、グッド・ヴァイブレーションズ)、「フランス映画祭2019」
それは実に巧みな構成の作品であり、2人の愛情が見事に描
き尽くされていた。
自分が男親の立場としては、悔しいけれどこれには敵わない
な…と思わされた。そんな感じの作品だった。
脚本と監督は、女優マリー・ラフォレの娘で2018年3月4日
題名紹介『ダリダ あまい囁き』などのリサ・アズエロス。
母親役を2013年8月紹介『シャンボンの背中』などのサンド
リーヌ・キベルラン、末娘役を監督の実子のタイス・アレサ
ンドランが演じている。

『カブールのツバメ』“Les Hirondelles de Kaboul”
イスラム原理主義のタリバンが支配するアフガニスタンの首
都を舞台に、暴力や惨劇に怯えながら暮らす若い男女の姿が
描かれる。
そんな状況の下でも、将来の夢と希望を糧に生きてきた2人
だったが、ある残虐な出来事を切っ掛けにその前途に暗雲が
広がり始める。
世界50カ国語に翻訳されたヤスミナ・カドラの原作を基に、
女優・映画監督のサブー・ブライトマンと、アニメーション
作家エレア・ゴベ・メヴェックの共同監督で描かれた作品。
実写では到底描けない物語が、アニメーションによって表現
されるが、それでも震撼とさせられる作品だ。
声優には2006年11月紹介『007/カジノ・ロワイヤル』な
どのシモン・アブカリアン、2016年セザール賞有望若手女優
賞受賞のジタ・アンロ、2011年6月紹介『匿名レンアイ相談
所』などのスワン・アルローらが起用されている。

『嵐』“HURLEVENT”
強風の中、道端に置かれた本のページが捲られ、印刷された
文字や記号が動き出す。フレデリック・ドアザン監督による
上映時間6分の作品。
パラパラ漫画を思わせるアニメーションだが、僕は本作を見
て夢枕獏のデビュー作『カエルの死』を思い出した。当時は
タイポグラフィで創られた作品が、今ならこんな風に描かれ
るのだろう。
本作の中では、アルファベットや記号が突然0と1だけにな
るなど、それは印刷文化とディジタルの戦いのような雰囲気
もあったが。全体としてはその変遷の意味が明確ではなく、
観る人が見れば判るのかもしれないが、僕には何かもどかし
い感じもした。
まああまり深い意味は考えず、アニメーションだけを楽しめ
ば良いのかもしれないが。
なお本作は短編のため、映画祭では『愛しのベイビー』『カ
ブールのツバメ』『マイ・レボリューション』と併映で上映
される。

『社会の片隅で』“Les Invisibles”
パリの道端で暮らす女性ホームレスたちを描いたセミドキュ
メンタリー・タッチの作品。
街角で女性ホームレス専用のシェルターを運営していた主人
公は、行政の指示で社会復帰の実績が上がらない施設の閉鎖
の危機に襲われる。その事態に何とか彼女たちの社会復帰の
道を広げようと奮闘するのだったが…。
遠隔地に作られて誰も行きたがらない公営シェルターの問題
など、恐らく現実が直面している問題も描かれているのだろ
う。それを別にしても半ボランティアのように活動する主人
公らの努力が報われない様子が怒りにも似て描かれる。
海外からの流入者など、日本の状況とは異なる面もあるのか
もしてないが、オリンピックなどを控えて我々の近い将来が
描かれている作品かもしれない。
ただし映画は、そんな状況でも奮闘する主人公らの前向きな
姿を描いたものだが。
脚本と監督は本作が長編4作目というルイ=ジュリアン・プ
ティ。出演は2014年『美女と野獣』などのオドレイ・ラミー
と、2017年4月2日題名紹介『アムール、愛の法廷』などの
コリンヌ・マシエロ。

『男と女V 人生最良の日々(仮)』
         “Les Plus belles années d'une vie”
1966年にフランシス・レイの音楽と物憂げなスキャットの主
題歌で一世風靡したクロード・ルルーシュ監督の出世作が、
53年の歳月を経て大団円を迎えた。
この物語では1986年に『U』も作られたようだが、本作では
そこからさらに33年後が描かれる。そこでは結局2人は結婚
しておらず、老いたスピードレーサーは介護施設で痴呆症と

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06月09日(日)
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