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On the Production
by 井口健二
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■第31回東京国際映画祭<コンペティション部門>
アゼルバイジャン・バクー鉄道を背景に、住宅地の軒先すれ
すれを走る列車の機関士が、その前面に貼り付いた洗濯物の
ブラジャーを巡って物語を紡ぎ出す。機関士はそのブラの持
ち主を探して沿線の住宅を巡り歩くのだが、それが人々との
交流やトラブルも生じさせてしまう。何しろ軒先すれすれを
走る機関車の存在感が抜群で、それに絡むエピソードはどれ
も面白い。それに比べると機関車を離れてからの主人公の行
動はちょっと変化に乏しいかな。途中では思い切ったことも
してはくれるが、その後がまた単調になってしまう。ここに
はもう二捻りか、三捻りくらい欲しかった。それと台詞なし
というアイデアは悪くはないが、ちょっと無理が感じられる
ところもあり、活かし切れてはいなかった。
        *         *
 以上で今回はコンペティション部門の16作品中15本を会期
中に鑑賞した。実は今回は、コンペ作品を会期中に観なけれ
ばならない制約があったため、すでに試写状が届いている日
本映画を後回しにしたものだ。
 そこで僕が選ぶ各賞は、
東京グランプリ:ヒズ・マスターズ・ヴォイス
審査員特別賞:アマンダ
最優秀監督賞:ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ
                    (翳りゆく父)
最優秀女優賞:イゾール・ミュルトゥリエ(アマンダ)
最優秀男優賞:イェスパー・クリステンセン(氷の季節)
最優秀芸術貢献賞:氷の季節
最優秀脚本賞:ヒストリー・レッスン
観客賞:テルアビブ・オン・ファイア

 これに対して実際の受賞は
東京グランプリ:アマンダ
審査員特別賞:氷の季節
最優秀監督賞:エドアルド・デ・アンジェリス
                    (堕ちた希望)
最優秀女優賞:ピーナ・トゥルコ(堕ちた希望)
最優秀男優賞:イェスパー・クリステンセン(氷の季節)
最優秀芸術貢献賞:ホワイト・クロウ
最優秀脚本賞:アマンダ
観客賞:半世界

 グランプリに関しては、今年の僕は敢えてSF作品を推さ
せて貰う。この作品は昨年度のグランプリに比べても優れて
いると思うし、上ではいろいろ書いたけれど、映画用に創作
された部分は、それがレムかどうかは別としてそれなりに良
く出来てはいた。特にプロローグと間奏の部分は、物語に新
たな解釈を加えるもので、それもSF的に面白かった。
 審査員特別賞は、時節的に選ばれて良い作品だし、実際の
受賞でグランプリなのも頷ける。監督賞は、実は女性の監督
だったことにも驚いたもので、ジャンルへの思い入れなどに
期待を込めて選んだ。
 その他の賞では、観客賞に関しては実際に選ばれた作品を
僕はまだ見ていないので、本来は保留とするべきだろうが、
自分で選んだ作品は今回鑑賞した中では一番面白かったし、
テーマ的にも惹かれるところが多かった。

11月03日(土)
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