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On the Production
by 井口健二
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■グランドピアノ、赤々煉恋、光にふれる、ファルージャ、おじいちゃんの里帰り
それでも主人公が旅費は負担するとし、何とか一家はトルコ
に出発するが、その旅は予想外の展開を迎えることになる。
そのお話に、幼い孫に孫娘が祖父の来歴を語って聞かせる形
式の回想シーンが挿入されて、ドイツとトルコ両国の関係が
明らかにされて行く。
両国の関係を描いた作品では、2008年9月紹介『そして、私
たちは愛に帰る』など、過去にも記憶に残る作品があるが、
一時はネオナチがトルコ人を標的にするなど、険悪な時代も
あったと記憶している。
と言っても現実的な関係は、遠く離れた異国の人間にはなか
なか理解し難いものだが、本作はそんな両国の複雑な関係も
垣間見せてくれる。
もちろん本作はトルコ系ドイツ人の監督と脚本家の姉妹が、
自らの家族について描いたヒューマンドラマで、複雑な政治
問題などを描くことは目的としていないが、それでも描かれ
ることの多くは両国の複雑な関係に基づいている。
しかもそれが皮肉ではなくユーモラスに描かれている。それ
は素晴らしい作品だった。これで両国の関係が理解できたな
どと思い上がったことは言えないが、その関係への理解が深
まることは間違いないものだ。
特に物語の多くが子供の目を通して描かれるので、その問題
も理解しやすい。中でもイスラム教徒のトルコ人がキリスト
教の国で暮らす難しさは、かなり強烈なユーモアも含めて納
得できるように描かれていた。
脚本と監督は、本作が監督デビューのヤセミン・サムデレリ
と、共同脚本は妹のネスリン・サムデレリ。姉妹はトルコ系
移民2世で、彼女らの実体験に基づく脚本は、第61回ドイツ
アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞している。
公開は、東京では11月30日よりヒューマントラストシネマ有
楽町にて、名古屋はシネマスコーレで12月14日から、大阪は
テアトル梅田で12月21日からとなっている。
11月10日(日)
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