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On the Production
by 井口健二
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■「フランス映画祭2013」
無垢に見える生徒とのやりとりが、やがて息詰まる心理戦へ
と変化して行く。
教師役は、昨年4月紹介『屋根裏部屋のマリアたち』などの
ファブリス・ルキーニ。生徒役に新人のエルンスト・ウンハ
ウワー。他にクリスティン・スコット・トーマスらが共演し
ている。
5月に紹介した『コンプライアンス』は心理学に基づく実話
の映画化だったが、本作は見事なフィクションで創作の妙を
感じさせた。
日本公開は秋に予定されている。

『遭難者』(仮)“Le Naufragé”
『女っ気なし』(仮)“Un monde sans femmes”
1977年生まれの新鋭監督による2009年のデビュー短編と、そ
の1年後に同じ舞台で、一部の登場人物も共通に作られた作
品の2本立て。後者はフランス批評家組合の最優秀短編賞を
受賞している。
1本目は、長距離サイクリングの途中の田舎町でタイヤがパ
ンクしてしまった男性に、田舎の青年が救いの手を差し伸べ
るが…。2本目は、バカンスでやってきた若い母親と幼い娘
にその田舎の青年が所有するアパートを貸す。そして母子と
青年は一緒に買い物をするような仲になるが…
どちらも有り勝ちな感じの作品だが、フランスでも2本立て
で公開されてロングランを記録。高く評価されたようだ。
監督のギョーム・ブラックはフランス国立映画学校の卒業生
で、長編の次回作も完成している。青年役のヴァンサン・マ
ケーニュはフランス高等演劇学校の卒業生で、昨年5月紹介
『灼熱の肌』にも出ていたようだ。
日本公開は秋に予定されている。

『アナタの子供』“Un enfant de toi”
1996年『ポネット』などのジャック・ドワイヨン監督が、実
娘で歌手のルー・ドワイヨンを主演に迎えたラヴコメディ。
物語の語り手は7歳のリナ。母親のアヤは優しい歯医者のヴ
ィクトールと恋人同士だが、実は元カレのルイともヨリを戻
しているらしい。そしてリナがその証拠を掴んだとき、母親
はリナにもう1人子供が欲しいと打ち明ける。その子供の父
親は…?
他愛もないラヴコメだが、男女が取り交わす会話などには、
さすが名匠と呼ばれる監督の力量が発揮され、嫌味のない巧
みな物語が展開されていた。
共演は、サミュエル・ベンシェトリ、マリック・ジディ。そ
してリナを演じた子役のオルガ・ミシュタンは注目だ。
上映時間136分の大作で、日本での一般公開は未定。

『黒いスーツを着た男』“Trois mondes”
アラン・ドロンの再来と言われるラファエル・ペルソナーズ
主演のサスペンスドラマ。
主人公は、3日後に結婚を控えている男性。貧しい母子家庭
に育った彼は自動車販売の会社で頭角を現し、支配人の娘も
射止めて次期支配人の座も目前にしていた。しかし正に魔が
差したというタイミングで交通事故を起こし、思わず現場か
ら逃走してしまう。
ところがその事故には窓辺から目撃していた女性がいた。そ
して被害者が不法移民で、その被害もぞんざいに扱われる状
況を目にした彼女は、密かに逃亡したひき逃げ犯を調査し、
その身元を突き止めるが…。その行為が彼女を思わぬ危険に
陥れてしまう。
映画の始まりは若者の馬鹿げた行為に見え、そこに典型的な
巻き込まれの女性が関って行く。そしてそこからのサスペン
スの盛り上げが見事な作品だった。
共演は、昨年6月10日付「フランス映画祭2012」で紹介
『ミステリー・オブ・リスボン』のクロチルド・エスムと、
2008年11月紹介『ロルナの祈り』のアルタ・ドブロシ。監督
は多くの女性映画で知られるカトリーヌ・コルシニが手掛け
た。
日本での一般公開は8月31日から予定されている。

以上の作品が24日まで開催の「フランス映画祭2013」で
上映され、一部はその後に日本公開もされる。フランス映画
祭も何年か紹介させてもらっているが、今年は特に力作揃い
で堪能できた。

06月20日(木)
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