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On the Production
by 井口健二
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■オン・ザ・ロード、素敵な相棒、風切羽、シェフ、恋のベビーカー大作戦、ジェリーフィッシュ、オーガストウォーズ、ワイルド・スピード6
は前回紹介した『愛のあしあと』も「旅するW座」の第1弾
として昨年11月に地方で公開されたとのことで、その流れで
今後東京での公開もあるかもしれない作品だ。

『ジェリーフィッシュ』
昨年9月に『自縄自縛の私』を紹介した「R-18文学賞」シリ
ーズのvol.2。今回は、1990年代の『ガメラ』シリーズや、
2000年代の『デスノート』を手掛けた金子修介が監督した。
原作は雛倉さりえという新人作家による6月21日に新潮社か
ら刊行予定の同名の小説。因にこの原作は第11回「女による
女のためのR-18文学賞」の最終候補だが、受賞はしなかった
ようだ。
女子高生の夕紀は、学校行事で訪れた水族館のクラゲの水槽
の前で同級生の叶子に声を掛けられ、戸惑いながらも唇を重
ねる。こうして親しくなった2人だが、平凡な家庭に育つも
日常に不満を抑えきれない夕紀はバイト先の店長に身体を委
ねたりもしている。
一方の叶子は常に孤独の闇を抱えており、そんな2人の関係
は徐々に深みに嵌って行くが、それと同時に叶子は同級生の
男子の告白を受け入れ、彼との行為に興じてしまう。そして
夕紀は叶子が中学時代に先輩の子供を妊娠して堕胎したとの
噂を聞き…
出演は、昨年8月紹介『FASHION STORY〜Model〜』に出てい
たという大谷澪と映画初出演の花井瑠美。因に花井は、東京
女子体育大学卒業のインカレ2連覇を果すなどした元新体操
選手で、試写会で挨拶に立って試写後に言葉も交わしたが、
なかなかしっかりした感じで好感が持てた。
他に、奥菜恵、秋本奈緒美、竹中直人、ガレッジセールの川
田広樹らが脇を固めている。
金子監督作品は一昨年から年2作のペースで公開され、その
殆どを試写会で観ているが、このページではできるだけ紹介
しようとしたものの、特に昨年の1本目に観た作品では何も
書く事ができず、結局この作品から全作品の記録を残すこと
を断念したものだ。
そんな金子監督の新作ということで、正直には試写会に行く
ことも躊躇われたが、観ての感想はやっと原点に戻ってくれ
たというものだった。
金子監督は、元は日活ロマンポルノ出身だが、僕が最初に注
目したのは1988年公開の『1999年の夏休み』。この萩尾望都
原作『トーマの心臓』を基にしたとされる作品で、深津絵里
ら若い女優を巧みに演出した手腕は高く評価された。そして
本作では大谷、花井がその期待に応えている。
金子監督は上記の大作でも評価されたが、このような作品で
も手腕を発揮してもらいたいものだ。

『オーガストウォーズ』
“Август. Восьмого”
2008年8月に起きた南オセチア紛争を背景に、巨大ロボット
が跋扈するという奇想天外な発想に基づく物語。
物語は、多少空想癖のある少年を中心に描かれる。彼の両親
は離婚しており、母親と共に暮らす少年に平和維持軍として
オセチアに駐在する父親から誘いが来る。そこは父親の故郷
でもあり、その地に暮らす祖父母に会いに来ないかというの
だ。その時現地は平穏に見えていた。
一方、新しい恋人からバカンスの誘いを受けていた母親は、
恋人に馴染まない息子をこの時とばかりに送り出すのだった
が…。突如南オセチアにグルジア軍の侵攻が始まる。そして
国際情勢を懸念して手をこまねくロシア政府を尻目に、グル
ジア軍は一般人も巻き込む戦闘を開始した。
この事態に息子の実父や新しい恋人も頼りにならないと判断
した母親は、単身で息子の救出のため交通も情報も途絶した
南オセチアの戦地に向かって、幼い息子との携帯電話の連絡
だけを頼りに潜入を開始する。
という物語に巨大ロボットが登場する。ただしそのロボット
の登場のさせ方は、ある種の常識的なものであり、常套手段
とも言える。しかしそれによって監督らが本当は何を描きた
かったのかは如実に判るし、その思いが観客にもストレート
に伝わってくる作品だ。
原案と脚本、製作、監督を務めたジャニック・ファイジエフ
は、2005年に“The Turkish Gambit”という文芸大作で評価

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05月30日(木)
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