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On the Production
by 井口健二
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■ザ・タワー、愛のあしあと、NY恋人たちの2日間、アート・オブ・ラップ、ギャツビー、コンプライアンス、ごみアート、特別映像(AE,LR,MU)
でカラー化されており、その映像も堪能したものだ。
『ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』“Waste Land”
2010年11月2日付「第23回東京国際映画祭」で報告した作品
が日本で一般公開されることになり、試写会が行われたので
改めて紹介する。
作品は映画祭の《natural TIFF》部門で上映されたもので、
この部門では自然や環境破壊などを中心テーマとしたドキュ
メンタリー作品が選ばれて紹介されている。
その中にあって本作では、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ
市郊外にある世界最大とも言われるゴミ集積場「ジャウジン
・グラマーショ」を舞台に、当事者たちも予想しなかった感
動的なドラマが描かれた。
ゴミ集積場を背景にした作品では、2005年11月7日付「東京
国際映画祭」で紹介した『ダラス地区』や、2009年4月紹介
『BASURA』などもあるが、いずれもその過酷な生活ぶ
りが印象に残るものだ。
そんな現実に対して、ブラジル出身の写真芸術家ヴィック・
ムニーズが行動を起こす。元々ムニーズはサンパウロの労働
者階級の息子だったが、街で金持ちが誤射した銃弾に当たっ
て、その慰謝料でアメリカに渡り成功したとのこと。そんな
芸術家が祖国で始めたのは…
2010年の紹介の時に僕は、「題名からは廃棄物から芸術を生
み出す変態芸術家の話かと思っていたら、全く違う感動的な
作品だった。」と書いているが、その思いは今回も変わらな
い。実際にこの題名は何とかならないのかとも思ってしまう
ものだ。
ただし、原題のWaste Landも「荒野」の意味だから似たり寄
ったりだが、そこに生まれる人間ドラマの素晴らしさは、こ
れらの題名だけでは到底表現しきれていない気がする。映画
の中では、ムニーズの行動によって多くの人々が救われて行
く様も見事に描かれているのだ。
それは邦題に謳う「奇跡」にも近いものなのだが。
一般公開は7月20日から東京渋谷のユーロスペース。その後
は全国順次公開となっているが、全国での自主上映での展開
も期待されているようだ。その詳細は、作品のホームページ
(gomiart.net)に紹介されている。
機会があったら是非とも観て欲しい作品だ。
『コンプライアンス−服従の心理−』“Compliance”
2004年4月にアメリカ・ケンタッキー州で起きたとされる事
件を再現した作品。
事件は町のファストフード店の店長に1本の電話が架かって
くることから始まる。その電話の主は警察官を名乗り、店員
の1人が客の財布を盗んだと語って、説明する特徴にぴった
りの女性店員を店長室に呼ぶように指示する。
さらに電話の主は家宅捜索で出向けないとの口実の下、店長
らに女性店員の身体検査を命じ、やがてそれはエスカレート
し、ついには女性店員に対する性的暴行にまで及ぶ。しかし
警察官を名乗る男の指示に誰も反抗できなかったという。
常識的に考えて、まず逮捕以前に着衣を脱がせての身体検査
などは、たとえ警察官であろうとも実施は不可能であり、ま
してやそれを民間人に代行させるなどはありえない。従って
この事件の実行者たちが、後に保護観察処分や実刑判決を受
けたというのは当然のことと言える。
とは言え、最近のオレオレ詐欺などの横行を見ると、その多
くが警察など公的権力を名乗っており、それに被害者が盲目
的に従っていることを考えると、この事件をアメリカでの出
来事と座視することもできないものだ。
因に事件はそれ以前の約10年に亙って全米で70回以上起きて
いたとのことで、それに対する注意義務を怠ったということ
で、当事者企業に610万ドルの損害賠償が命じられたという
のも納得できるところだろう。ただし賠償裁判が裁判員に委
ねられない日本では、企業は保護されるだろうが。
出演は、2009年2月紹介『グラン・トリノ』でイーストウッ
ドの娘役を演じていたドリーマ・ウォーカー、2006年10月紹
介『父親たちの星条旗』などのアン・ダウト。ダウトは本作
の演技で数多くの受賞に輝いている。他に、2007年12月紹介
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05月20日(月)
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