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On the Production
by 井口健二
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■箱入り息子の恋、はじまりのみち、殺人の告白、モスダイアリー、オブリビオン(追記)、クソすばらしいこの世界、キス我慢、シャニダール
という作品が上映された朝倉加葉子監督による長編第1作。
「きみをよんでるよ」も何か不思議なムードの漂う作品だっ
たと記憶しているが、本作ではその不思議方向の志向がさら
に追求されたとも言えそうな作品だ。
物語はアメリカ西部が舞台。大学に通う韓国人留学生の主人
公は、日本人留学生のグループに週末旅行に誘われるが、旅
を始めるなり彼らの英語も真面に学ぼうとしない態度に辟易
してしまう。
それでも何とか目的地に辿り着いた主人公たちだったが、そ
こで彼らを惨劇が襲う。宿泊する山荘の持ち主が実は殺人鬼
で、前の犯行の証拠を見られた思い込んだ奴らが主人公たち
を襲い始めたのだ。そして物語は別の様相も見せ始める。
出演は、2009年の『息もできない』という作品で韓国大鐘賞
新人女優賞を受賞したキム・コッピ。キムの主演では、今年
6月8日に『蒼白者』という作品も公開される。他に2011年
6月紹介『ムカデ人間』などの北村昭博らが共演。
上映前に監督の挨拶があって、女性監督の作品だという認識
でいたらプロローグからかなり強烈なシーンが登場した。監
督はこれをスラッシャーと称しており、スプラッターほど血
は迸らないが、かなり強烈な血みどろの惨劇が描かれる。
これは確かにスラッシャーであってスプラッターではない作
品だが、日本の男性監督の多くがある意味血糊の量に逃げて
いるのに対して、真正面からスラッシャーを描いたこの女性
監督には、心からの賛辞を贈りたくなったものだ。
いやあそれにしても強烈な作品だった。
ただし映画を観ていて、後半の展開はやはり物語として唐突
な感じが否めなかった。まあ描きたいことは判る感じだし、
僕もこの展開は嫌いではないのだが…。この物語的にこれが
必要であったか否か。
もっとストレートにスラッシャーとして描き切った作品も観
たかったかな? あるいは後半の展開が目的なら、プロロー
グからその伏線をもっと明確にしておいた方が良かったので
はないかな?
まあプロローグでこれを持ち出すには、かなり捻りが必要に
なるとは思うが…。現状のままではテーマの融合が不完全に
も感じられて、そこがちょっと残念な気がした。

『キス我慢選手権THE MOVIE』
テレビ東京で土曜深夜に放送されている「ゴッドタン」とい
う番組の企画の一つを映画として映像化した作品。
企画の内容は、美人がキスをせがむのを出演する男性芸人が
決められた時間我慢するというもの。それだけでは面白くも
何ともないが、その時間をアドリブの演技でかわすというの
が見せ所になるらしい。
それが番組では人気企画だったようで、番組が5年間続いた
記念でそれを映画化したようだ。しかも映画版ということで
我慢する時間を24時間に拡大し、撮影には20台のカメラを動
員、さらに爆破などの仕掛けも設けられている。
という正に拡大版という感じの作品だ。
そして出演するのは、本来は番組のMCの1人だという劇団
ひとりこと川島省吾。元々彼が挑戦した時の出来が良くて企
画が成功したという実績があるようで、それで映画版にも起
用されたようだが、本人には詳細は知らされていない。
こうしておぎやはぎやバナナマンらが外野から茶々を入れる
中、番組はスタートして行くが…。
確かに作品の乗りとしてはテレビで見慣れている連中が登場
するもので、テレビのファンにはこれで充分な作品だと思わ
れる。実際に画面を観ながら僕も結構笑わせて貰った。しか
しこれは所詮ヴァラティ番組、ドラマ番組ですらない。
従ってドラマの展開などに映画のクオリティが感じられるか
というと、それは残念ながら物足りなさが目に付くもの。特
に川島は全編をアドリブで交わして行くのだが、流石に24時
間はモチベーションも保ち切れなかったようだ。
設定にはゾンビなども登場して僕ら的には興味も惹かれる作
品だったが、やはりドラマはちゃんとシナリオのあった方が
良いし、そこに伏線やどんでん返しがあって初めてドラマと
呼べる訳で、アドリブだけの即興劇にそれは望めない。

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05月10日(金)
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