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On the Production
by 井口健二
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■監禁探偵、タニタ…食堂、17歳のエンディングN、私は王である、ライジングD、燃える仏像人間、きっとうまくいく、ソラから来た転校生
がごった混ぜの感じで、それがまたほとんどシーンの羅列だ
から、全体的には落ち着きもないし、大味な感じもする。
でもこれがジャッキー・チェンがやり続けてきたことなのだ
し、彼の集大成ということでは間違いなしの作品と言える。
チェンの最後の勇姿を目に焼き付けておきたいものだ。

『燃える仏像人間』
1986年京都府生まれ、京都嵯峨芸術大学卒業という新人クリ
エーターの宇治茶(漫画作家としてのペンネームだそうだ)
が脚本、監督、作画、撮影を務めるデビュー作。
物語の背景は仏像窃盗団が暗躍する京都。主人公の紅子は実
家である寺の仏像を盗まれ、その際に両親も惨殺され天涯孤
独の身となる。そのため彼女は両親と旧知だった僧侶の寺に
引き取られるが、そこで窃盗団の犯行を聞かされる。
その手口は物質転送装置使うという。しかもその転送に巻き
込まれた生物は仏像と融合し、怪奇な仏像人間になってしま
うというのだ。そして紅子は両親を殺された復讐心に燃える
のだが…。
作品は劇メーションと称される切り絵を動かして撮影された
もので、手法としてはチープ感も漂うが、アーチストの個性
を出す目的では効果のあるものだ。ただ演出などはもう少し
工夫できる部分もあったとは思えた。
声優と一部出演は人気声優の井口裕香。他に寺田農。実相寺
昭雄監督夫人の原知佐子、今年2月紹介『セデック・バレ』
にも出ていた北岡龍貴、物まね芸人のレイバー佐藤、芸人の
渡辺裕薫らが脇を固めている。
監督のプロフィールによると好きな本は「幼年期の終わり」
だそうだが、この手法でもっとストレートなSF作品も作れ
るのかな、出来たら観てみたいものだ。好きな漫画が楳図か
ずおと諸星大二郎なのは頷ける。
ただし本作の内容的には、1986年にデヴィッド・クローネン
バーグがリメイクしたジョルジュ・ランジュラン原作『ザ・
フライ』が元になっていると思われるが、その辺りの名前が
出てこないのは何故なのだろうか。
切り絵を動かすアニメーションでは、手塚治虫がシリーズの
制作を始める前に単発で発表した『鉄腕アトム』なども思い
出されるが、その辺も監督は知っているのかな。現在の日本
アニメの第1歩だった手法の再現とも言えるものだ。
物語的には、さすが京都育ちという感じのひねりもあるし、
それなりの作品にはなっていた。今回はそれを劇メーション
という形で完成させているが、この先どのような方向に進ん
で行くかも注目したいところだ。

『きっと、うまくいく』“थ्री इडीयट्स”
2月紹介『タイガー・伝説のスパイ』3月紹介『闇の帝王』
『命ある限り』に続く「ボリウッド4」の4本目。2009年に
公開されてインド映画史上のNo.1に輝いているという作品。
物語は、インドの名門工科大学ICEに入学した3人の新入
生を中心に進められる。その内の1人ランチョーは優秀な生
徒で、先輩などの嫌がらせもさらりとかわし、その後で強烈
な仕返しをしてみせたりもする。
そんな3人は、嫌味な学長やゴマすりの留学生、さらには学
長の美しい娘らと共に、人生の理想と現実との間に彷徨いな
がらも青春を謳歌して行く。その中では彼らの行状に手を焼
いた学長が、放校処分を決めたりもするが…。
そして卒業から10年後、彼らの内の2人はランチョーが街に
帰ってくるとの知らせに、旅行もキャンセルして大学の屋上
にやってくる。ところがやってきたのは嫌味だった留学生、
彼はランチョーとの賭けに勝ったと言う。
そして留学生が調べたランチョーの実家を訪ねた彼らは、そ
こで驚愕の事実を知ることになる。
インド映画では普通のこととは言え全体は3時間近い大作。
その前半は学生生活を描いた見事な青春グラフィティーで、
これは今回の「ボリウッド4」の中では異色だが、それも巧
みに描かれた素晴らしい作品だった。
そして映画の後半で明かされるランチョーの実像は、僕自身
が団塊の世代で親の期待を背負って工学系の大学に進んだ者

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03月30日(土)
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