ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460048hit]
■アンタッチャブルズ、キング・オブ・M、ヒステリア、ロイヤル・アフェア、旅立ちの島唄、セデック・バレ、ヒッチコック、恋する歯車
紹介『海角七号』のウェイ・ダーション監督が描いた前後編
4時間36分作品。
台湾中部の山岳地帯では古来より虹を信仰する狩猟民族セデ
ック族が暮らしていた。彼らは複数の部族に分かれて狩猟場
を争いながらも、自然に調和した暮らしを続けていた。とこ
ろが1895年の日清戦争で清が敗北したにより、台湾は日本の
領土となる。
その後は鉱物資源が豊かとされる山岳地帯に日本軍の進駐が
始まり、さらに年月が過ぎると、部族の若者の中にも日本の
教育を受けて警官になるものも現れる。しかし「蕃人」と呼
ばれる彼らへの差別は一向に消えなかった。そして彼らの間
に不満が高まり始める。
主人公は、セデック族の中でマヘボ社と呼ばれる部族を率い
るモーナ・ルダオ。彼は初めての首狩りで瞬く間に2つの首
を挙げ、一気に英雄となっていたが、同時にトンバラ社のタ
イモ・ワリスとの間には遺恨を残していた。そんな部族間の
問題も孕みながら歴史が動いて行く。
物語は、抗日の英雄の姿を描いた2部作ということで、ある
種『チェ!』の2部作に通じるイメージも感じていた。だと
すると前編は勝ち戦、後編は負け戦となる訳で、それは多少
辛くも感じられるものだ。しかし本作では、確かに負けては
いるが、精神的には勝ち戦のような高揚感も感じられた。
一方、日本軍の横暴さが国辱的に描かれている危惧もあった
が、その辺も巧みな表現で一方的ないやらしさは感じられな
かった。それは監督の前作にも通じる感じで、日本人にも問
題なく観られる作品になっている。ただ、後半の幻想シーン
には多少戸惑ったが。
主演は、台湾南部に住むタイヤル族の出身で現地教会の牧師
を勤めながら民話や民族精神の伝承活動もしているというリ
ン・チンタイ。映画は初出演だそうだが、圧倒的な存在感で
作品を牽引している。
共演は父親がセデック族出身というマー・ジーシアン。他に
タイヤル族のビビアン・スー、ルオ・メイリン、ダーチン。
さらに日本から安藤政信、河原さぶ、木村祐一、春田純一、
田中千絵らが脇を固めている。
因に監督は、1997年に事件を描いたチウ・ルオロンの漫画を
読んで映画化を思いつき、ルオロンが製作したドキュメンタ
リーにボランティアとして参加。これを踏まえて書き上げた
脚本は1999年に新聞局の優良映画脚本にも選出された。
そして2003年には私費で5分間のトレーラーを製作。さらに
本編の製作に向けた準備を進めるも資金難で計画は頓挫。し
かし2008年に公開した『海角七号』が台湾で大成功を収め、
満を持しての本作の製作となったとのことだ。
『ヒッチコック』“Hitchcock”
生涯で5度のアカデミー賞・監督賞の候補になりながらも、
ただ1度の受賞も叶わなかった映画監督アルフレッド・ヒッ
チコックと、その妻アルマ・レヴィルの姿を、共にオスカー
受賞者のアンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレンの初共演
で描いた作品。
子供の頃には、ちょっと不思議な感じのテーマ音楽で始まる
TV番組が好きだった。
この映画にはそのテーマ音楽が聞こえ、さらにそのタイトル
バックにもなっていたシルエットも登場して、そのTV番組
が放送されていた当時の1960年に製作されたヒッチコック監
督最大のヒット作『サイコ』の顛末が描かれる。
それはTV番組も放送されて人気は高まったものの、もはや
監督としてのピークは過ぎたと言われ始めていた頃のお話。
映画会社からオファーされる企画には興味が湧かず。自ら企
画を探していたヒッチコックは、ロバート・ブロック原作の
小説『サイコ』に目を留める。
しかし実在の連続殺人鬼を描いたその作品は、ハリウッドが
エンターテインメントとして公開するにはおぞまし過ぎる内
容だった。だが、何より観客にショックを与えることを好む
監督には、正にうってつけの作品。とは言え常に適切な意見
を述べる妻のアルマも、今回ばかりは懐疑的だった。
ところが「ヒロインが映画の中盤で殺される」とアイデアを
語った監督に対してアルマの答えは、「いえ、最初の30分で
[5]続きを読む
02月05日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る