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On the Production
by 井口健二
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■汚れなき祈り、アンナ・カレーニナ、体温、愛アムール、暗闇から手をのばせ、カルテット!、ジャンゴ繋がれざる者、魔女と呼ばれた少女
わせてくれる見事な作品でもあった。
逆に興味本位ででも観てくれれば、それでも本作の目的は果
たせたのではないかな、そんな風にも感じられた。

『カルテット!人生のオペラハウス』“Quartet”
2度のオスカー主演賞に輝くダスティン・ホフマンが、公式
には初の映画監督に挑戦した作品。
舞台は、イギリスにある音楽家専門の老人ホーム「ビーチャ
ム・ハウス」。そこは資産家が残した邸宅を利用して設立さ
れたものだが、運営費は残さなかったらしく、毎年開かれる
コンサートの収益が頼みの綱だ。そして今年はヴェルディ生
誕200周年を記念したコンサートを開く計画だった。
ところが予定された往年のスターソリストが出演を辞退し、
チケットの販売が激減する事態に陥る。それでも練習だけは
怠らない面々だったが。そんな時、施設の車が新入居者の出
迎えに行くことが判明、それは大スターが入居することの前
触れだった。
こうして新たな大スターを迎えて、施設の存続を賭けたコン
サートへの準備が始まるが…。そこには様々な人生の経緯が
隠されていた。果たしてコンサートは無事開幕されるのか?
出演は、昨年10月紹介『マリーゴールド・ホテルで会いまし
ょう』などのマギー・スミス、2008年1月紹介『ライラの冒
険・黄金の羅針盤』などのトム・コートネイ、2003年11月紹
介『ラストサムライ』などのビリー・コナリー、昨年12月紹
介『アルバート氏の人生』などのポーリーン・コリンズ。以
上は全員が大英帝国勲章の叙勲者だ。
他に、マイクル・ガンボン、シェリダン・スミス、コメディ
俳優のアンドリュー・サックスらが脇を固めている。
さらにホームの入居者として、ギネス・ジョーンズ、ナウラ
・ウィリス、ジョン・ローンズリーらのオペラ歌手。世界最
高齢トランペッターと言われるロニー・ヒューズ。また訪問
者役でラッパーのジュイマン・ハンターらが出演して、見事
な演奏や歌唱を披露している。
ホフマンはブロードウェイの舞台演出などは手掛けており、
1978年には自らの主演作でもクレジットなしで監督したこと
があるようだが、本作が公式には映画初監督作品。因に本作
では、脚本に惚れ込んで自らが憧れるイギリスを舞台にした
物語に挑戦したようだ。
それにしても、一緒に紹介した『愛、アモール』とは見事に
対をなした感じの作品で、方やリアルに描ききったシビアな
老後に対して、こちらは夢のような老後。もちろん現実には
厳しい部分もあるけれど、こんな夢も見たい気分にさせてく
れる作品だった。

『ジャンゴ繋がれざる者』“Django Unchained”
現代アクション映画の旗手とも言えるクエンティン・タラン
ティーノ監督が初めて西部劇に挑んだ作品。
物語の始まりは、鎖に繋がれて荒野を進んでゆく黒人奴隷の
行列。そこに歯科医と称する男が現れ、奴隷商人に金をちら
つかせながら欲しい奴隷がいると告げる。そして何やら話し
かけながら品定めをした男は、1人の黒人を選び出す。
その男は賞金稼ぎで、黒人が以前に暮らしていた農場の牧童
たちを探しているという。そこで賞金の掛けられた男たちの
顔を知る黒人が必要だったのだ。こうして賞金稼ぎと行動す
ることになった黒人青年には、別のある目的があった。
奴隷制度が生き残るアメリカ南部を舞台に、自由人となった
黒人青年が立ち向う、差別と暴力に歪んだ白人社会の実態が
暴かれて行く。
内容的にはかなり社会派的なドラマが展開されるが、それが
タランティーノ特有のアクションで彩られる。それはサム・
ペキンパーとも違うし、またコーエン兄弟とも違うものだ。
しかしどこか懐かしさも感じられる。そんな西部劇が描かれ
ていた。
出演は、ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、
レオナルド・ディカプリオ、2004年4月紹介『白いカラス』
などのケリー・ワシントン、そしてサミュエル・L・ジャク
スン。
他に、ドン・ジョンスン、フランコ・ネロ、ラス・タムブリ
ン、ブルース・ダーン、マイクル・ボーエン、ロバート・キ

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01月30日(水)
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