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On the Production
by 井口健二
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■ベラミ、さよならドビュッシー、サイレント・ハウス、カルメン故郷に帰る、アルバート氏の人生、君と歩く世界、チチを撮りに、PARKER
女優賞を獲得しているが、僕は今回見直した上でもマクティ
アの演技の方が素晴らしいと思ったものだ。

『君と歩く世界』“De rouille et d'os”
2007年7月紹介『エディット・ピアフ 愛の讃歌』で米アカ
デミー賞主演女優賞に輝いたマリオン・コティアールの主演
による人間ドラマ。
1人目の主人公は幼い息子を連れて放浪する男性。金もなく
他人の食べ残しを漁ったり、カッパライをするなどして何と
か姉の家に辿り着いた男は、屈強な身体とムエタイの心得を
活かして闇の格闘技場で体を張ることになる。
もう1人の主人公は、同じ町のマリンランドでシャチの調教
師だった女性。しかし予期せぬ事故で彼女は両足の膝から下
を失ってしまう。そんな失意から立ち直れない女性がふとし
たことで先の男性との付き合いを始めるが…
いやあ、何とも作り物めいたお話だが、元々の原作は同じ作
家による2篇の短編小説だったそうで、その両足を失った調
教師の話とアンダーグラウンドの格闘家の話を映画用に纏め
たのだそうだ。
従って2人の恋愛関係などは原作にはないもの(原作の調教
師は男性だそうだ)だが、その辺を結構巧みに作っているの
が本作の面白いところだ。しかもその2つの原作のお話を、
映画では両方とも取り入れているのだから…。まあ普通なら
絶対に有り得ない大変な展開となっている。それもまた面白
いと言える作品だった。
それに事故後の調教師の両足が、これは見事なVFXで消去
されており、さらに義足になってからの姿も、それは見事な
CGIで表現されていた。両足のない人物というと、1994年
『フォレスト・ガンプ』のヴェトナム帰還兵の姿が当時は驚
きだったが、今や普通に出来てしまうようだ。
共演は、2009年10月紹介『ロフト.』に出演のマティアス・
スーナーツ。本作ではヴァリャドリッド国際映画祭の最優秀
男優賞を受賞したそうだ。他に、2010年11月紹介『ヒアアフ
ター』などのセリーヌ・サレット、今年6月10日付「フラン
ス映画祭2012」で紹介した『スリープレス・ナイト』などの
ジャン=ミシェル・コレイアらが脇を固めている。
脚本と監督は、2005年7月紹介『真夜中のピアニスト』など
のジャック・オディアール。また脚本には、2009年にオディ
アール監督がカンヌ映画祭の審査員特別グランプリを受賞し
た『預言者』にも参加のトーマス・ビデガンが名を連ねて、
見事な脚色を仕上げている。
因に、原作者のクレイグ・デイヴィッドスンはカナダ出身。
原作は2005年の発表だが、処女作は“The Preserve”という
ホラー小説だったそうだ。

『チチを撮りに』
今年7月に紹介した『DON'T STOP』と同じくSKIPシティ国際
Dシネマ映画祭にエントリーされ、その支援の許で一般公開
されるSKIPシティDシネマプロジェクトの第3弾。
前の紹介作品はドキュメンタリーだったが、今回はドラマ。
母親と2人娘の母子家庭に、14年前に家出した父親が病床で
余命もわずかになったとの報らせが届き、母親の指示で娘た
ちが見舞いに向かうことになるが…
物語は、その報せの届く少し前から始まって、娘2人の紹介
などが実に手際よく描かれる。そして母親から事情が告げら
れ、愛人を作って家を出た元夫に会いたくない母親は、娘た
ちに病床の父の顔を撮ってくるようカメラを託す。
こうして娘たちの旅が始まるが、不在に慣れた2人には父親
の影は希薄のようだ。それでも父親を覚えている姉と覚えて
いない妹との会話からは、それまでの母子が辿ってきた生活
が描かれ、さらに様々なドラマが展開されて行く。
上映時間は1時間14分で、小品と呼ぶべき作品だが、描かれ
ている内容は意外と奥深くて、登場人物たちの性格付けなど
も行き届き、なかなかの秀作に仕上がっていた。実際に次の
試写に向かう途中の会話でも高評価の声が多かった。
それに巧みに張り巡らされた伏線も、思わず笑みが浮かんだ
り、納得できたりしたものだ。
出演は、姉役を2007年4月紹介『天然コケッコー』などの柳

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12月23日(日)
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