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On the Production
by 井口健二
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■もうひとりのシェイクスピア、マリーゴールド・ホテル、009、フリーランサー、みせものやさん、阿賀に生きる、96時間リベンジ、PA4
て手品をし、その手品の種を売るというものだったが、片言
を話す割には顔立ちがしっかり日本人なのに笑った。しかし
その手の出し物は1975年以降取り締まりが厳しくなったそう
で、そんな規制も衰退の原因だったのかもしれない。
本作の中でも一瞬、白い人という言葉が聞こえたような気が
したが、映像には出てこなかったようだ。その一方で、本作
では北海道だけで興行しているというオートバイの曲乗りな
ども登場し、これは最近アメリカ映画でも描かれていたが、
その迫力はなかなかのものだった。
その他、見世物小屋とお化け屋敷、射的、ダーツなどとの関
係も、いろいろ興味深いものがあり、さらに登場する小屋の
模型には感心させられもする作品だった。廃れゆく文化かも
しれないが、それなら一層いま記録を残しておくべきもの。
監督にはさらに継続を期待したいものだ。

『阿賀に生きる』
イタイイタイ病の呼称でも知られる水俣病。その新潟県阿賀
野川で発生した公害問題と、その川の流域で暮らす人々の姿
を追った1992年公開のドキュメンタリー。その作品が、20年
ぶりに16mmニュープリントで再公開されることになった。
撮られているのは20数年前の日本の姿。そこでは川沿いの谷
に張り付くように耕作された田んぼや、川で特殊な漁法で鮭
を捕る人たち。そしてその人たちに川船を建造する船大工の
姿などが描かれている。
もちろんその中には水俣病の裁判の話なども登場はするが、
それは決して声高なものではなく、作品は主に当時の人々の
生活ぶりを追っているものだ。
そこには、公開当時にどこまで意図されていたのかは判らな
いが、現代に観ているとそのほとんどが既に失われたかもし
れない日本の原風景であり、たった20年の間にそれらが失わ
れてしまった、逆に言えば20年前にはまだこれらが残ってい
たことに感動を覚える作品だった。
実は、自分の父親の生家が滋賀県琵琶湖畔の船大工の家で、
父の兄がその仕事を継いでいたものだが、子供の頃の夏休み
に里帰りをすると、湖畔の作業場に作りかけの船があったり
したの記憶している。
その父の生家で作っていたのは用水路を移動する田舟で、船
の構造なども大川を行く川船とは多少違うが、子供の頃には
判らなかったその建造方法が、本作を観ていて多少理解でき
たのも嬉しかった。
しかしその技術も失われて行くものなのだろうし、作品の中
では後継者も登場するが、その人も高齢で20年も経つと、本
当に失われてしまっているのかもしれない。そんなことも考
えてしまう作品だった。
監督は、2007年に他界した佐藤真。実は一緒に紹介した『ニ
ッポンの、みせものやさん』の奥谷監督は生前の佐藤監督に
師事していたそうで、確かに作風に似たところもあるが、そ
んな2作品を続けて見られたのも奇遇だった。
なお試写会では当時の撮影監督が挨拶に立ったが、本作では
画質の良いことにも驚嘆した。最近は大手の作品でもニュー
プリント版は何作品か観ているが、その中でも出色の美しい
映像だった。
これはフォルムの原版の保存がしっかりとされていることの
証明でもあるが、そんなところにもこの作品に寄せる関係者
の思いが感じられたものだ。

『96時間リベンジ』“Taken 2”
2009年6月紹介『96時間』の続編。製作・脚本リュック・
ベッソン、脚本ロバート・マーク・ケイメン、主演リーアム
・ニースン、そして共演のマギー・グレイス、フェムケ・ヤ
ンセンも全員揃っている。
ただし監督には、前作のピエール・モレルに代って今年6月
紹介『コロンビアーナ』などのオリヴィエ・メガトンが起用
された。
前作の時は、何しろ強い父親が向かうところ敵なしでバッタ
バッタと相手をなぎ倒し、愛娘を誘拐した集団を全滅させて
しまったもの。しかしその因果は本作に及び、前作で息子を
殺された父親が復讐を誓うことになる。従って題名のリベン
ジとは、主人公ではなく犯人側が行うものだ。
こうして復讐心に燃える父親と前作犯人集団の親類たちが、

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10月21日(日)
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