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On the Production
by 井口健二
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■シルク・ドゥ・ソレイユ、ボディ・ハント、カミハテ、宇宙人王さんとの遭遇、駆ける少年、ミロクローゼ、横道世之介、ダーケストアワー
ていたのでそのまま出てしまったが、鑑賞客との談笑にも花
が咲いていたようだった。
『ミロクローゼ』
マネキンを使ったテレビシリーズ『オー!マイキー』で知ら
れる石橋義正監督が、今年6月紹介『闇金ウシジマくん』な
どの山田孝之を主演に迎えて制作した長編劇場映画。
長編とは言っても、それぞれは恋愛に関する3つの物語が奇
妙に交錯する構成の作品で、各話の主人公を山田が演じる。
ただしそれらはパラレルワールドとも取れる感覚で作られて
おり、主人公は全体で1つの人格を表しているそうだ。
その最初は幼い姿の主人公の物語(このパートの一部は子役
が演じている)。彼は何の変化もない日々を送っていたが、
ふと立ち寄った公園で美しい女性に出会ってしまう。そして
その女性に恋をした主人公は…
2つ目は若者に恋愛指南をする評論家の話。毒舌で辛辣な放
言を繰り返す男だが、彼の言うことにはそれなりの理論も備
わっている。そして彼は日夜若者のために相談を受け続けて
いるのだ。その解決策などが描かれる。
3つ目は花屋の娘に恋をした片目の素浪人の話。彼は恋敵を
倒し彼女と旅に出るが、強盗団に彼女を拉致されてしまう。
しかし彼女の姿を追い求める主人公は、幾つもの修羅場をく
ぐり抜け、遂に彼女の行方の手掛かりを得る。
という3つの物語が、最初はメルヘン、2つ目はミュージカ
ル、3つ目はアクション映画のスタイルで、CGIやVFX
も満載に描かれて行く。それはかなり強烈だが、全体は嫌味
のない感じに仕上げられている作品だ。
共演は、2009年6月紹介『山形スクリーム』などのマイコ、
昨年1月紹介『婚前特急』などの石橋杏奈、2010年7月紹介
『神様ヘルプ!』などの佐藤めぐみ。
他に、原田美枝子、奥田瑛二、映画監督の鈴木清順、2008年
12月紹介『クジラ極道の食卓』などの岩佐真悠子、元プロレ
スラーの武藤敬司らが脇を固めている。また、石橋監督は、
他に脚本、美術、編集、音楽も担当している。
『オー!マイキー』に関しては、僕はたまたま何本か観てい
る程度だが、作品の表現方法が斬新だとは思わないものの、
物語はそれなりに面白いところを突いているという印象だっ
た。ただし表現自体にはかなりどぎつい感じもあった。
本作もそんなノリという感じの作品で、これを受け入れられ
るかどうかは、観る側の感性にも拠ってしまいそうだ。でも
まあ最近の日本映画はこのような作品が多いもので、そんな
中でこの作品は、僕には許容範囲だったと言える。
なお本作は、昨年のニューヨークアジア映画祭のオープニン
グ作品に選ばれ、山田は日本俳優初のライジングスター賞を
受賞したそうだ。
『横道世之介』
吉田修一著、2010年本屋大賞第3位、柴田錬三郎賞受賞の原
作を、2011年12月紹介『きつつきと雨』の沖田修一脚本・監
督で映画化した作品。
青春映画だという以外、ほとんど予備知識なしに試写を観に
行ったが、巻頭のシーンで度肝を抜かれた。それは新宿東口
の俯瞰風景から始まるが、右にMyCity、正面にさくらやのあ
る景色の中を上京したばかり主人公が歩いて来るのだ。しか
もそこに走ってくる中央線は全体がオレンジ色。
物語はかなり後半まで時代が特定されないが、そこには正に
僕が生きていた時代の風景が見事に再現されていた。そんな
見事な映像の中で、それは少し不器用かもしれないけれど、
真面目に生きて周囲に暖かさを振り撒き続ける、ちょっと切
ない主人公の姿が描かれる。
その主人公は長崎から上京して法政大学に入学したが、入学
式で隣りに座った男子や、教室で隣り合った女子ともすぐに
仲良くなる。それは彼の性格にも拠るのだろうが、さらに彼
はセレブ女性と知り合ったり、またお金持ちのお嬢様に慕わ
れるようにもなって行く。
そんな主人公の学生生活が描かれて行くが、それは正にその
時代の青春ドラマであって、現代とは違った素敵なノスタル
ジーに満ちたものだった。そしてそこには現代から見た思い
出話も挿入される。それらが誰からも愛された主人公を浮き
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10月07日(日)
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