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On the Production
by 井口健二
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■大恐竜時代、モンスター・ホテル、自縄自縛の私、ファースト・ポジション、アパートメント:143、長良川ド根性、ELEVATOR、4:44
くないと考え、新人監督にチャンスを与えたものだそうだ。
新人監督はその期待によく応えている。
『長良川ド根性』
今年5月に『死刑弁護人』という作品を紹介している東海テ
レビ制作のドキュメンタリー。同制作では2011年5月に『青
空どろぼう』という作品を紹介しているが、本作はそれに繋
がる漁業問題を扱った作品だ。
1995年に運用開始された長良川河口堰の建設に至るまでの経
緯や、その運用開始から16年を経た地元漁師の姿を、主には
三重県桑名市赤須賀にある漁業協同組合の組合長の姿を通し
て描く。
鵜飼で有名な長良川は岐阜県郡上市に源流を発し、揖斐川、
木曽川と共に並流して伊勢湾に注ぐ。その流域は以前は洪水
の常襲地であったが、1970年代に長良川河口域の浚渫が開始
され、それに伴う海水の逆流防止の目的で河口堰の建設が着
工される。
しかしそれは、その河口域で漁獲され、古来からの常套句に
もなっている桑名の蛤を、年間3000tの水揚げからから1t未
満に激減させる。その危険を先から察知していた赤須賀漁協
は河口堰の建設に猛反対していたのだが。
御用学者による公聴会や、最後まで反対した赤須賀漁協には
国賊かのようなバッシングまで行われて、漁協は苦渋の選択
をしなければならなくなる。それでも組合長は人工干潟の建
設や、さらに稚貝の人工孵化の研究も進めていた。
そして運用開始から16年、河口堰を前提とした漁業をどうに
か安定させ、若い漁師も増え始めた赤須賀漁業に新たな問題
が持ち上がる。その対決の場での、映画終盤の組合長の姿は
鮮烈だ。
元々河口堰は愛知県内に建設され、その水は名古屋市近郊に
配給される。それに対して影響を受ける漁民の多くは、三重
県とあとは岐阜県に点在する。そんな背景も愛知県が良いよ
うにことを進め、それを覆す元凶のようにも見える。
しかし問題は、ここ長良川河口堰だけに限らず、日本全国で
同様の環境破壊や反対運動が続いていることにも繋がる。そ
れは国が地方を無視し、さらに一部の献金企業のために国民
の税金ばら撒いて進める事業の全てに共通するものだ。
なお作品では、組合長がここに至った人生や、さらに長良川
の上で川漁を続ける漁師、赤須賀の古老の漁師の姿なども描
いて、映画全体を見応えのあるものに仕上げていた。
『ELEVATOR』“Elevator”
高層ビルのエレベーターに閉じ込められた人々の姿を描いた
ソリッドシチュエーション・スリラー作品。
大都会に建つ投資会社のオーナーの名前を冠した高層ビル。
そこでは何かのパーティがあるらしく人々が集まってくる。
そしてエレベーターにはオーナーとその孫娘や、パーティの
余興に呼ばれた芸人らが乗り合わせていた。
ところがその孫娘が悪戯で緊急停止ボタンをいじった事から
物語が始まる。そこには結婚間近な投資会社の社員とテレビ
の人気キャスターでもあるその婚約者。さらに妊婦や顧客の
老婦人や中東出身者のセキュリティガードなどもいて、多様
なドラマが展開される。
しかもそこに爆弾が仕掛けられたという事態が判明する。
出演は、2008年5月紹介『レッドライン』に出ていたという
クリストファー・バッカス、2008年8月紹介『センター・オ
ブ・ジ・アース』で注目したアイスランド出身のアニタ・ブ
リエム、2010年10月紹介『ソーシャル・ネットワーク』など
のヘンリー・バートン。
さらに、1990年代の『ホーム・アローン』で主人公の兄を演
じていたラヴィン・ラトレイ、2003年3月紹介『ヤァヤァ・
シスターズの聖なる秘密』などのシャーリー・ナイト、今年
6月紹介『ディクテーター』に出演のジョーイ・ストロニッ
クらが脇を固めている。
監督は、ノルウェー出身で本作が長編2作目のスティグ・ス
ヴェンセン。製作と脚本は、2007年11月紹介『ディセンバー
・ボーイズ』のマーク・ローゼンバーグが手掛けている。
舞台がエレベーターという作品では、2001年公開のジョビジ
ョバ/マギー監督による『ショコキ!』が記憶に残っている
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09月23日(日)
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