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On the Production
by 井口健二
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■バイオハザードV、天心の譜、Tiger & Bunny、ウーマン・イン・B、LIFE OF THE DEAD、388、ワーキング・ホリデー、BUNGO+Godzilla
が原因で言い争いとなった妻の姿が消える。しかし状況から
単なる家出と判断した警察は取り合ってくれない。
さらに不審な出来事にも警察の動きは遅く、ついには夫のパ
ソコンに不審な画像が送られ始める。そんな事態の中での夫
の行動が、屋内の各所や自家用車の中にも仕掛けられた隠し
カメラの映像で描かれ、やがて夫の精神状態が追いつめられ
て行く。
この種の犯罪を扱った作品では、犯罪者の心理なども気にな
るところだが、本作ではそれは全く明らかにされず、それが
物語の不気味さを増加させる。それは2008年9月に紹介した
ミヒャエル・ハネケ監督の『ファニー・ゲームUSA』にも
通じる不条理さに満ちたものだ。
そして本作では、それが『パラノーマル・アクティビティ』
などのPOVにも似た隠しカメラの映像で描かれ、ある種の
異様な臨場感も与えられている。
出演は、2003年7月紹介『ターミネーター3』などのニック
・スタール、2006年『ブラック・ダリア』などのミア・カー
シュナー、2000年『ファイナル・デスティネーション』など
のデヴォン・サワ。
他に、2010年9月紹介『アメリア−永遠の翼』などのアーロ
ン・エイブラムス、今年4月紹介『フェイシズ』などに出演
のクリスタ・ブリッジスらが脇を固めている。
正直に言って後味の良いとは言い切れない作品だが、内容的
には、もしかすると現実にも起こり得るかもしれない恐怖が
描かれている。その点では現代への警鐘という点で、観る価
値も生じる作品だ。
ただ、映画の中で夫の設置したカメラの映像が混ざるのは、
作品のコンセプトに合っていないのではないかな。その辺は
ちょっと勇み足のようにも感じられた。些細なことではある
が、決めたことは決まり通りにやって欲しかったものだ。

『ワーキング・ホリデー』
吉本興業企画・製作で、「ひきこもり探偵シリーズ」などの
坂本司原作、文春文庫所載の同名小説からの映画化。
新宿歌舞伎町でホスト稼業の男に許に、突然少年が現れる。
さらに訝しむ男に対して少年は、「僕はあなたの息子です」
と自己紹介する。そしてホストクラブのママや同僚ホストの
協力で、春休み限定の父子の共同生活が始まるが…。
出演はEXILEのAKIRA、2010年2月紹介『誘拐ラプソディー』
などの子役の林遼威。他に今年6月紹介『るろうに剣心』な
どの綾野剛、2月紹介『幸運の壺』などの逢沢りな。さらに
お笑い芸人のほんこん、ゴリ、8月紹介『のぼうの城』など
のちすんらが脇を固めている。
脚本は、2011年『僕たちは世界を変えることができない。』
などの山岡真介。監督は、讀賣テレビのドラマ『奇跡の人』
などの演出や『六千人の命のビザ』などのプロデューサーを
務めた岡本浩一の長編映画監督デビュー作となっている。
いろいろなことがあっても、結局大人に成り切れていない男
と、父親不在の中で逞しく育ってきた少年。どちらかという
と少年の方がよっぽど大人の逆転父子が、共同生活の中でい
ろいろなものを掴んで行く。
言ってみれば吉本新喜劇のような他愛ないストーリーだが、
そこにはそれなりに現代を反映しているような部分もあり、
それらがユーモアやギャグも絡めた展開の中で、気持ちよく
進んで行く作品だ。
ただ、映画のクライマックスとも言えるシーンで、主人公の
運転する宅配便の車のナンバープレートが白なのはちょっと
気になった。その車は、プレートの平仮名が「わ」なのでレ
ンタカーと思われるが、営業用車で白ナンバーはちょっとま
ずいだろう。
エンドロールには、協力として「クロネコヤマト」の名前も
あったように思ったが、そこを何とか利用してもう少し誤魔
化して欲しかった感じもしたものだ。まあ法律上の縛りもい
ろいろあるから、融通の利かない日本の警察相手では難しい
のも理解はするが。
それにしてもこんな親子って、少し前なら考えもしなかった
ところだが、今の世間には案外現実にいるのかな、そんなこ
とも考えさせられる作品だった。それでも物語全体が前向き
なのが、心地よい作品でもあった。

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09月16日(日)
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