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On the Production
by 井口健二
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■三大映画祭週間、やがて哀しき…、ひみつのアッコちゃん、カルロス、声をかくす人、ナナとカオル2、ふがいない僕は…+Time and Again
お話は完全に前作の続きで、学力優秀スポーツ万能の優等生
ナナと、その隣に住む幼馴染みだが、こちらは落ちこぼれの
カオルの物語。ふと目覚めたナナのM気質の息抜きのため、
以前からSMに興味のあったカオルが協力して行くというも
のだ。
そして今回は、春休みに以前の担任から信州の旅に誘われた
ナナが、訪れた大自然の中、何故か現れたカオルと共に、伝
説を背景にしたSMプレイを繰り広げる…。と言っても内容
はいたってソフトだが、前作より多少エスカレートしている
のかな。
また作品では、羽衣伝説に纏わる信州の自然の風景や、多少
謎めいた古民家なども登場して、都市部に住むものにはそれ
なりの観光的な楽しさも味わえるように作られている。その
中での主人公らの行動も期待に添うものだ。
出演は、カオル役に前作に引き続いての栩原楽人と、ナナ役
は新たに青野未来。青野は以前に紹介していた「青春H」シ
リーズに出演があるようだが、本格的な映画主演は初めての
ようで、それなりに際どいシーンにも挑んでいる。
脚本と監督は、前作も手掛けた1997年『ねらわれた学園』な
どの清水厚。またSMシーンの指導は、前作にも参加した女
緊縛師の荊子が当っている。内容はソフトだが、解説なども
それなりにされているものだ。
さらに音楽を『マクロスF』劇中歌などの山田稔明が担当し
主題歌「あさってくらいの未来」などを提供してる。
因に監督は、すでにオーディションで新人女優を見つけてい
るそうで、第3作の製作にも意欲的なようだ。本作でもカオ
ルの将来に対する不安などはかなり克明に描かれており、そ
れが決着する第3作は作られるものだろう。
ただし、描かれるプレイは徐々にエスカレートさせる必要が
ある訳で、本作の先に何が描けるか。それも気になるところ
だ。

『ふがいない僕は空を見た』
2010年「本の雑誌」ベスト10第1位、2011年本屋大賞2位、
第24回山本周五郎賞受賞の窪美澄原作による連作短編小説の
映画化。
平凡な高校生だった卓巳は、友人に誘われて行った同人誌の
即売会でコスプレの主婦里美にナンパされる。そして訪ねて
行ったマンションの部屋でコスプレをしたままのセックスに
耽るようになる。
そんな2人の蓬瀬と、助産院を営む卓巳の母親の許を訪れる
様々な女性たち、さらに卓巳の幼馴染みでコンビニでバイト
をしながら環境に埋もれそうになっている良太。その良太の
姿にそのままではいけないと諭す田岡らが絡んで、性と生を
巡る群像劇が描かれる。
実は映画に対する事前の印象では、卓巳と里美の話が前面に
あって、それはちょっと興味本位な作品の感じだった。しか
も映画の前半にもかなり際どいシーンなどもあって、これは
そういう映画だと思わされてしまったものだ。
しかし物語が訴えるのはその様なところではなくて、より深
く真剣な物語がここには描かれていた。
出演は、2010年8月紹介『マザーウォーター』などの永山絢
斗、2010年3月紹介『さんかく』などの田畑智子。他に原田
美枝子、窪田正孝、三浦貴大。さらに2011年10月31日付「東
京国際映画祭(2)」で紹介した『ももいろそらを』などの小
篠恵奈、今年6月紹介『闇金ウシジマくん』などの田中美晴
らが脇を固めている。
監督は、2008年4月紹介『百万円と苦虫女』などのタナダユ
キ、脚本は2004年2月紹介『リアリズムの宿』などの山下敦
弘監督作品や2009年2月紹介『ニセ札』などの向井康介が担
当した。
原作は1篇ごとに主人公が異なる連作短編となっているよう
だが、映画はそれらを1本の脚本に纏めている。従って形式
としてはアンサンブル劇となっているものだが、その割りに
は卓巳と里美の話に力点が置かれすぎて、全体のバランスが
取れていない感じだ。
しかもこの部分では時間軸の入れ替えなども行われているか
ら、これはこれで纏めて描かざるを得ないものになってしま
っている。そのため卓巳と里美以外のエピソードは一層取っ
て付けたような感じでしっくり納まらない。

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07月29日(日)
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