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On the Production
by 井口健二
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■ピラニア2、凍える牙、トガニ、セブン・デイズ・イン・ハバナ、かぞくのくに、DON'T STOP、鍵泥棒メソッド、LIGHT UP NIPPON+Valerian
という男性の夢を実現するために出発した旅の記録。
作品では、最初に高橋とCAPの来歴や出会いなどが簡潔に、
且つ過不足なく紹介され、続いて旅の参加メムバーなども紹
介される。そしてエルパソから北進してルート66に合流、
そこからLAまでの西半分の旅が開始される。
ところがその旅というのが、初端から豪雨に見舞われるは、
車の破損や故障、さらにはバイクの事故まで、たった10日間
の旅なのにトラブルが続出、そしてメムバー内の対立など、
ドラマが展開されて行く。
さらにCAPの自らのもどかしさから来る感情の起伏や、それ
に応じ切れない周囲の人たちの心の動きなども丁寧に捉えら
れ、それらがバランス良く見事に描かれて行く。その一方で
ホワイトサンズやモニュメントバレーなども紹介され、そこ
での人々との出会いや交流などが描かれる。
いやあ、これが本当にたった10日間の旅の記録なのか、驚か
されるくらいのヴァラエティに富んだ内容で、状況から見て
演出があるとは思えないが、仮にあっても素晴らしい作品に
なっていた。そして題名に託されたメッセージも明確に伝わ
ってくる作品だった。
監督の小橋は、俳優の頃もちょっと甘いマスクで気に入って
いる役者の1人だったが、監督に転身して、しかも演出なし
のドキュメンタリーでここまでいろいろなものを呼び込める
才能というか運の良さみたいなものにも感心した。
なお本作は、昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映さ
れ、SKIPシティアワードを獲得して第2弾作品支援の対象と
なっている。ぜひとも第2作にも期待したい。

『鍵泥棒メソッド』
2008年『アフタースクール』が高評価の内田けんじ脚本・監
督による長編第2作。
主な登場人物は3人。売れない役者の男性と希代の殺し屋、
それに婚期に遅れた女性編集者。役者は自殺をし損ねて風呂
屋に行き、そこで殺し屋と遭遇。ある偶然から殺し屋に成り
済ます。一方の殺し屋は記憶を喪失し、自分は売れない役者
と思い込む。
そして女性編集者は役者と思い込む殺し屋と知り合い、彼の
人生を一途に見つめる人柄に引かれて行くが…。そこに殺し
屋に仕事を依頼した暴力団のボスや、標的の女性などが絡ん
で話が展開される。
出演は、6月紹介『るろうに剣心』などの香川照之、2011年
5月紹介『日輪の遺産』などの堺雅人、2009年2月紹介『GO
EMON』などの広末涼子。他に、荒川良々、森口瑶子。さらに
小山田サユリ、木野花、小野武彦らが脇を固めている。
最近は、再現ドラマのような実録作品やドキュメンタリーを
観る機会が多かった中で、久しぶりにドラマを観たという感
じの作品だった。
まあシチュエーションとしてはありそうもないし、こんなに
上手く行くことも有り得ないのだが。あったら面白いだろう
なと思わせる、そんな感じの作品だ。そしてそんな物語の中
で俳優たちが大芝居を繰り広げる。
特に香川は、冷徹な殺し屋と気弱な売れない俳優役を丁寧に
演じ分け、その中での恋愛感情なども巧みに表現していた。
一方の堺は気弱な中での大胆さを出す演技は、これは本領の
ような感じだ。そして広末も比較的表情を出さない中での健
気さを上手く演じていた。
それに物語上の伏線というか仕掛けが巧みで、それも正に映
画を観ている感じがして楽しかった。そこにお涙ちょうだい
の感動があるものでもないし、特別なカタルシスがあるもの
でもないが、これが映画だとはっきりと言える作品だ。
特にジグソウパズルのピースのようにばらばらにちりばめら
れた要素が、最後にピッタリと納まる快感はフィクションの
ドラマを観ているときの醍醐味と言える。それを気持ち良く
味合わせてもらった。

『LIGHT UP NIPPON〜日本を照らした、奇跡の花火〜』
2011年8月11日、3/11の震災の傷跡も生々しい東北の空を
彩った花火。その花火が打ち上げられるまでを追ったドキュ
メンタリー。
始まりは2011年の春。3/11以後の自粛ムードを受けて東京
湾大花火大会の中止が発表される。その中止の是非は本作で

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07月01日(日)
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