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On the Production
by 井口健二
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■道、シグナル、ザ・マペッツ、崖っぷちの男、だれもがクジラを愛してる、ヘソモリ、この空の花、ブレーキ
ック族のジョン・ヒガヤック、アーマック・スウィーニーら
が脇を固めている。
監督は、2009年4月紹介のドリュー・バリモア主演作『そん
な彼なら捨てちゃえば?』も手掛けたケン・クワピス。脚本
は、2006年9月紹介『シャギー・ドッグ』などのジャック・
アミエル&マイクル・ベグラーが担当した。
物語は、後半でソ連の砕氷船エニセイ号が救助に向かうが、
艦船がアメリカ領海に入る際に星条旗を掲げるシーンや最後
に氷原に乗り上げて氷を砕くシーンなど、実際のままのもの
が再現され、それは当時を知るものには特に感動的なシーン
に仕上がっていた。
また映画には「ゴードン・ゲッコーみたいだ」という台詞が
登場し、映画ファンにはその前年に『ウォール街』が公開さ
れていたことを思い出させてくれた。
なお、撮影はほぼ全編がアラスカで行われているそうだ。
『ヘソモリ』
福井県に1500年続く紙漉きの伝統を背景に県内でオールロケ
されたファンタシー作品。
主人公は福井県で伝統の紙漉きを継承している親子。しかし
紙漉きの傍ら武術の鍛練にも余念がない。そんな親子が守る
紙漉き工場の壁には、鳥居をあしらったちょっと不思議な家
紋が掲げられていた。
そしてお話は数10年前。山で遊んでいた男の子5人組はクマ
に追われて山奥に入り、祠に守られた謎の穴を発見。その穴
に入った5人組は、代々主人公の家に伝わるある秘密に遭遇
することになる。
ヘソモリ…それは日本のヘソを守る人たち。そのヘソとは…
過去1500年の各時代に通じるタイムトンネルだった。そして
主人公の一家は、そのヘソが悪用されないように守ってきた
のだが、現代に至ってその秘密を知る他者が現れる。
小松左京氏が1963年に発表した「御先祖様万歳」などSFで
は同種の作品は多数あると思われるが、今回紙漉きの伝統と
絡ませたアイデアはそれなりに買えるものだ。それはもしか
して、紙漉きの伝統を紹介する目的が先にあったのかもしれ
ないが。
SFファンから観れば、物語の展開はお手軽とも言えるもの
だが、これが小松氏が以前に語った「SFの拡散と浸透」の
典型のような気もしてくる。小松氏の小説も一般誌の「別冊
サンデー毎日」に発表されたものだ。
出演は、永島敏行、渡辺いっけい、石丸謙二郎、中村育二、
佐野史郎。他に、谷村美月、烏丸せつこ、村田雄浩、若林豪
らが脇を固めている。また福井県無形文化財の和紙職人・岩
野平三郎氏が特別出演している。
脚本と監督は、TVCMディレクターの入谷朋視。監督は北
海道の出身だが、2009年の福井広告賞TVCM大賞を受賞す
るなど「第2の故郷」と呼ぶほど地元とは縁の深い人のよう
で、そんな福井に対する思いの込められた作品のようだ。
物語のキーとなる護符に描かれた星は五芒なのに、アナの蓋
に付けられているのは六芒星であるなど、ちょっと疑問に感
じる部分もあったが、続編を期待させる結末など、いろいろ
気になる作品ではあった。
『この空の花』
大林宣彦の脚本・監督で、新潟県長岡市の花火を題材にした
Movie Essayと称する上映時間2時間40分の作品。
物語の語り手は熊本県天草在住の女性新聞記者。その女性記
者が2011年夏という背景の許、いくつかの取材目的で新潟県
長岡市を訪れる。そこでは大災害の年に花火大会を開催する
か否かで揉めていた。
その頃、彼女のかつての恋人でその地で高校教師をしている
男性は、生徒が書いた「まだ戦争には間に合う」という台本
を河川敷で上演する準備に奔走していた。一方、女性記者は
地元新聞に同じ題名の連載記事を執筆する記者を訪ねる。
こうしてタクシー運転者や地元記者の案内で長岡市を探訪す
る女性記者は、第2次大戦や中越地震などにまつわる長岡市
の過去を探訪して行くことになる。そして河川敷では芝居の
リハーサルが始まっていた。
物語の全体の流れは、女性記者と高校教師の関係ということ
になるが、Movie Essayと称されている通り、映画は女性記
者の巡り会う様々な事象に目を向け、特に戦争に対する多く
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04月29日(日)
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