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On the Production
by 井口健二
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■相馬看花、モバイルハウス、オレンジと太陽、キリマンジャロ、ブラック・ブレッド、コラボ・モンスターズ、ブラックパワー、赫い髪
『女優霊』や『リング』シリーズの脚本家=高橋洋の監督に
よる短編3作品。
西山監督の『kasanegafuti』は、三遊亭圓朝原作の怪談話を
現代を舞台に描いた作品。ただし監督自身は「髷を着けない
時代劇」と称しているようで、原作の雰囲気を残したドラマ
が展開される。
と言っても、原作は口演すると8時間に及ぶという大作。本
作はその中の「豊志賀」の下りだけを描いているが、それで
も30分程度にするには無理があった感じだ。特に因果応報の
経緯が唐突で、豊の変貌もこれだけでは納得できない。
有名な原作だから知っておけというのが監督のスタンスなの
かも知れないが、そういう観客だけではないものだ。同じ題
材では中田秀夫監督の『怪談』(2007年5月紹介)もあり、
いまさらという感じもした。
出演は、前回紹介した『先生を流産させる会』の宮田亜紀。
何かに取り憑かれたような演技はこの人の得意技?
古澤監督の『love machine』は先の紹介作品にも通じる恋愛
関係を描いた作品。主人公は恋愛が本能という男性で、次々
に女性を乗り換える行状が描かれるが…。最後に多少捻りが
あるのも先の紹介作品に通じていた。
コメディとしてのセンスも悪くないし、作品としては楽しめ
た。ただ結末に関してはそれを先に示唆するシーンが無かっ
たようで、もちろんそれはあからさまであってもいけないの
だが、もう少し何かヒントは欲しかった感じだ。
出演は、2008年2月紹介『泪壺』などの小島可奈子。今回も
奔放な演技を存分に見せてくれる。因に古澤監督は、2011年
4月『アベック・パンチ』も紹介しているが、ちょっと泥臭
い感じの演出は監督の持ち味としていいのかな。
高橋監督の『旧支配者のキャロル』は、今回3作品の中では
一番見応えがあった感じだ。
物語の舞台は、今回の試写会も行われた東京渋谷の映画美学
校。そこで学んでいた生徒たちの卒業制作が始まり、1人の
女子生徒が監督に選ばれる。そして彼女は厳しい教師だった
女優に主演を依頼するが…
題名に在る通りの、旧支配者である教師への生徒だった監督
の挑戦が描かれる。そこでは若い才能を叩き潰そうとする教
師の態度や生徒間の確執なども描かれ、正に熾烈な闘争が繰
り広げられる。
3作品の中では1番長い47分の作品だが、その間が全く目を
離せない緊張感で綴られ、これは強烈な作品だった。それは
苛烈な映画制作の現場が描かれるが、そこに映画に対する愛
情が感じられるのも良いものだった。
出演は、2009年3月紹介『腐女子彼女。』などの松本若菜。
他に中原翔子、津田寛治らが脇を固めている。
なお3作品は3本立てで5月12日から、映画美学校に併設の
オーディトリアム渋谷でレイトショウ公開される。

『ブラックパワー・ミックステープ』
“The Black Power Mixtape 1967-1975”
原題の通りの時代にスウェーデンのジャーナリストグループ
によって撮影されたフィルムが約30年振りに発見され、その
フィルムに基づいて制作されたドキュメンタリー。
1960年代の半ばには‘Black is beautiful’という言葉と、
1968年のメキシコオリンピックで突き上げられた黒手袋の拳
と共に世界を揺るがせた「ブラックパワー」が、やがて麻薬
によって衰退して行くまでの10年間が描かれる。
そこにはキング牧師やマルコムX、さらにアンジェラ・デイ
ヴィスやストークリー・カーマイクルらも登場してその時代
が描かれて行く。因にキング牧師とマルコムXはアーカイヴ
映像だが、デイヴィスとカーマイクルに関しては独自のイン
タヴューも含まれている。
それはその時代に学生から社会人になっていった僕自身を含
む団塊の世代の人にとっては、懐かしくもあり、いろいろな
記憶も蘇ってくる作品だった。
ただし本作に関しては当時これが撮影された経緯などが明確
でなく、当時番組として放送された物なのかどうか、特に残
されていたのが編集された作品か、素材だけだったのかなど
も知りたかったところだ。
というのも今回公開される作品には、現代の主にミュージシ

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04月01日(日)
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