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On the Production
by 井口健二
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■キラー・エリート、サイタマノラッパー3、決闘の大地で、キリング・フィールズ、ジョン・カーター、三重スパイ+製作ニュース
た多くの亡命者を受け入れたフランスの首都では、国政選挙
での共産政党の躍進と隣国ドイツでのナチスの台頭、さらに
スペイン内戦などが世間の話題となっている。
そんなパリに住む主人公は、元はロシア白軍の将校で現在は
在仏ロシア軍人協会に事務員として務めている。その彼には
ギリシャ人で画家の妻がいて、彼自身は共産主義にもファシ
ズムにも距離を置く温厚そうな紳士だった。
ところが夫妻の住むアパートの階上の部屋に急進的な共産主
義者の一家が入居し、妻を通じて交流が始まったことから物
語は動き始める。その一家を夫は自分を監視に来たスパイと
疑い、その頃から夫の出張が頻繁になり、妻は夫の行動にも
疑問を抱き始める。
そしてついに夫は、自分は諜報活動に従事していると告白す
るのだが…。
映画の巻頭には、「実話に基づく話だが、描写には想像を含
む」とのテロップが掲載され、物語は実際の事件にインスパ
イアされたもののようだ。しかも事件は未解決のもので、そ
の動機なども解明されていないという謎に包まれたもの。
それで、そのスコブリン事件というのがフランスでどれほど
著名なものかは知らないが、かなり非情なスパイの姿が見事
に描かれた作品と言えるものだ。また1930年代のパリを克明
に再現した背景や、要所に挿入されるニュース映像なども巧
みに構成されていた。
それにしても、第2次大戦前の混乱ぶりが見事に描かれた作
品で、歴史に興味のある人にはかなりそそられる作品といえ
そうだ。
出演者は、日本ではあまり知られている人は少ないが、主人
公の妻を演じたカテリーナ・ディダスカロウは、1984年夏期
ロサンゼルスオリンピックの際に、アテネで行われた聖火の
採火式で巫女を務めた女性だそうだ。
なお、「フランス映画未公開傑作選」ではもう1本。2010年
に他界したクロード・シャブロル監督の『刑事ベラミー』も
上映される。この作品は、昨年の東京国際映画祭でも特別上
映されたが、その時も今回もスケジュールの都合で観ること
が叶わなかったものだ。
        *         *
 今回も製作ニュースを少しまとめて紹介しよう。
 まずは、『ヒューゴの不思議な発明』なども手掛けるGK
フィルムスから、リック・ヤンシー原作のヤング・アダルト
SF3部作“The 5th Wave”の映画化権を獲得したことが発
表された。
 物語は、異星人の侵略を生き延びた10代の少女を主人公に
したもので、彼女が異星人に拉致された兄弟を捜す旅が中心
とされる。しかもこの侵略者の体型が地球人に似ているらし
く、少女は偽装して異星人の社会に潜入するようだ。そして
その旅にはやはり異星人に偽装した少年も加わり、そこには
三角関係のロマンスも描かれるらしい。
 という物語の3部作が映画化されることになるものだが、
本作の製作にはトビー・マクガイアが主宰するマテリアル・
ピクチャーズも参加しており、さらにソニー・ピクチャーズ
が共同出資と配給権の交渉を行っている。つまり映画が完成
したらソニーを通じて日本でも公開されるようだ。
 因に原作者のヤンシーは、2005年に発表したこれも3部作
の第1作となった“The Monstrumologist”という作品が、
児童文学の最高賞の1つとされるカーネギー・メダルの最終
候補に残ったとのことで、この作品もハリウッドでの映画化
が期待されているものだ。
 そして今回の映画化に関しては、原作の出版前に交渉が行
われたもののようで、Amazonで調べても原作本は見ることが
できなかった。
 一方、今回の映画製作に参加するマクガイアは、近年GK
フィルムスとの関係を深めているようで、すでに2003年11月
紹介『シービスケット』などのゲイリー・ロス脚本・監督に
よる“Outback”と言うSF作品の計画が進められている。
この作品にはキャリー・マリガンの主演も予定されているよ
うだ。
        *         *
 続いてはワーナーから、アルカイア・エンターテインメン

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03月11日(日)
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