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On the Production
by 井口健二
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■けの汁、別離、きっとここが帰る場所、KOTOKO、シネマ歌舞伎・高野聖、裏切りのサーカス、ファウスト+Oscar,VES
リーズで映像化されていて、その時には300分以上の時間が
掛けられていたのだから、それを128分に凝縮しただけでも
大変なものだ。
従って物語はかなりシンプルにされているはずだが、それで
も複雑怪奇なスパイの内幕が感じられるのは、それだけ丁寧
に脚色されているということなのだろう。観ていてそんな満
足感も得られる作品だった。
共演は、昨年1月紹介の『英国王のスピーチ』でオスカーを
受賞したコリン・ファース。他に、昨年11月紹介『インモー
タルズ』などのジョン・ハート、今年1月紹介『マリリン・
7日間の恋』などのトビー・ジョーンズ、今年1月紹介『第
九軍団のワシ』に出演のマーク・ストロングらが脇を固めて
いる。
監督は、昨年5月紹介『モールス』のオリジナルの『僕のエ
リ200歳の少女』を手掛けたスウェーデンの俊英トーマス・
アルフレッドスン。
脚本は、2010年6月紹介『ヤギと男と男と壁と』などのピー
ター・ストローハンと、ストローハンの夫人で本作の執筆後
に急逝したブリジット・オコナー。本作のクレジットは彼女
に捧げられていたようだ。

『ファウスト』“Faust”
2008年10月紹介『チェチェンへ/アレクサンドラの旅』など
のアレクサンドル・ソクーロフ監督の最新作で、昨年ヴェネ
チア国際映画祭でグランプリの金獅子賞を受賞した作品。
ゲーテの原作に基づく作品だが、映画の巻頭には「自由な解
釈による」との但し書きが添えられて、原作にはあまり縛ら
れない映画化とされている。とは言え人工生命体「ホムンク
ルス」などはちゃんと登場しているものだ。
ではあるのだけれど、壮大なファンタシーを期待して行くと
多少思惑外れの感じはしてしまうところで、メフィトフェレ
スは高利貸しの姿のままだし、特に超自然的な能力を発揮す
るわけでもない。
でもまあ作品の全体に流れる雰囲気はこれは見事なもので、
金獅子賞の受賞も頷けるものだ。ギリシャ神話の世界は登場
しないが、これがゲーテの描いた「ファウスト」の真髄とい
うところなのだろう。
脚本は、ソクーロフ監督とロシアとドイツの文化交流が専門
の文化史研究家のマリーナ・コレノワ、それに全ロシア国立
映画大学脚本科で教鞭を取っているユーリー・アラボフ。彼
らは1999年『モレク神』でカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞
している。
出演は、2009年のアメリカアカデミー賞で外国語映画部門に
ノミネートされたオーストリア映画“Revanche”に出演のヨ
ハネス・ツァイラー、ロシア出身の俳優・ダンサーのアント
ン・アダシンスキー、ロシア出身でドイツで活躍しているイ
ゾルダ・ディシャウク。
他に、昨年7月紹介『ミケランジェロの暗号』などのゲオル
ク・フリードリッヒ、2008年9月紹介『そして、私たちは愛
に帰る』で全米映画批評家協会賞助演女優賞を受賞したハン
ナ・シグラらが脇を固めている。
また撮影は、2001年『アメリ』や2008年『ハリー・ポッター
と謎のプリンス』などでアカデミー賞候補になったブリュノ
・デルボネル。因に現在は、ティム・バートン監督、ジョニ
ー・デップ主演による往年のTVシリーズ“Dark Shadows”
の映画化を手掛けているようだ。
        *         *
 日本時間27日に発表された今年のアカデミー賞は、昨日紹
介の『アーチスト』が作品、監督、主演男優の主要3部門に
加えて衣裳、作曲の5部門を制し、昨年12月紹介『ヒューゴ
の不思議な発明』は美術、撮影、音響編集、録音、視覚効果
の受賞で、同じく5部門は制したものの、主要部門の受賞は
ならなかった。
 その他の作品では2月紹介『マーガレット・サッチャー/
鉄の女の涙』が主演女優とメイクアップの2部門を受賞。メ
イクアップは映画紹介の時にも述べたようにイギリス同士の
争いだったが、スーパーヴァイザーを務めている人は格上な
のかな。
 後は1部門ずつの受賞で、昨年11月紹介『人生はビギナー
ズ』が助演男優、今年1月紹介『ヘルプ・心をつなぐストー

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02月27日(月)
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