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On the Production
by 井口健二
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■マンイーター、ルート・アイリッシュ、父の初七日、それぞれの居場所、アーティスト、テイク・シェルター、アポロ18、イップ・マン誕生
に取り憑かれた男を描いたドラマ作品。
主人公は、工事現場で地質調査のボーリング作業に従事して
いた男。その男が悪夢にうなされるようになり、その悪夢は
災厄の訪れを予感させる。そこで男は、庭にあった退避壕の
拡充を開始するが…それは家族の生活基盤を揺るがすものに
もなって行く。
共演は、2010年1月紹介『バッド・ルーテナント』などに出
演のシア・ウィグハム、昨年7月紹介『ドライブ・アングリ
ー3D』などに出演のケイティ・ミクソン。また主人公の幼
い娘を演じているトーヴァ・スチュワートは本作がデビュー
作のようだ。
神の啓示を受けて災厄を逃れる準備を始める話は、旧約聖書
の「ノアの箱船」から様々に語られてきているものだが、そ
れが待避壕の話だと1960年代には核シェルターにまつわる話
がいろいろ描かれていた。
その中でも、TV「ミステリーゾーン」でロッド・サーリン
グが描いた“The Shelter”というエピソードは、本作と同
様に周囲から疎まれながらもシェルターを完成させた男の物
語で、本作の鑑賞中、僕にはその記憶も重なってかなり緊張
した。
脚本と監督はジェフ・ニコルズ。2007年に発表のデビュー作
“Shotgun Stories”が数々の賞を獲得し、本作が第2作と
いう俊英だが、脚本、監督共に手堅く纏めていた感じだ。
そして製作総指揮は、『アバター』などにも参加したVFX
製作会社ハイドラックス創設者のグレッグ&コリン・ストラ
ウスが担当して、本作でも主人公が観る啓示のシーンなどを
見事に描き出している。
また製作総指揮にはもう1人、『ツリー・オブ・ライフ』や
2003年6月紹介『フリーダ』なども手掛けたサラ・グリーン
が参加して、その参加が作品の風格を高めている感じだ。
『アポロ18』“Apollo 18”
2004年『ナイト・ウォッチ』がロシア国内で記録的なヒット
となり、2010年『ウォンテッド』でハリウッドに進出したテ
ィムール・ベクマンベトフ監督が、本作では製作を担当して
いるNASAアポロ計画を背景にした作品。
1969年のアポロ11号以降、NASAは1972年の17号まで13号
を除く計6回の有人月面探査に成功したが、当初予定された
20号までの計画は予算の問題などで短縮され、18号以降の探
査は中止になったとされている。
しかしアポロ18号は1974年に国防総省の要請によって極秘に
打ち上げられ、その記録映像がネット上で発見された…。と
いう設定のドキュメンタリー形式の作品。映画の巻頭では、
「本作はネット上の映像を編集しただけである」旨の掲示が
されている。
その計画は、遂行する3人の宇宙飛行士の家族にも秘密にさ
れ、3人は極東への派遣という名目でアポロ18に搭乗する。
そして目指したのは月面の南極に当る地帯。それは着陸船の
到着までは順調に進んで行ったが…
2011年7月紹介『トランスフォーマーズ/ダークサイド・ム
ーン』でも、プロローグではアポロ計画に隠された「真実」
が題材にされたが、本作ではその「真実」の部分だけが描か
れている。そしてそこに隠された「真実」は…これで計画を
中止しちゃっていいのか?てなものだ。
この手のフェイクドキュメンタリーは、最近特に流行のよう
になっているが、僕が観た中では1970年代にイギリスBBC
の老舗科学番組が、アメリカとソ連が結託して密かに火星移
住計画を進めているという内容を「4月1日」に放送したの
が傑作だった。
実は今回の作品では、その結末の部分の映像がかなり似てい
たのも気に入ったところだ。ただ、どうせやるなら最後まで
押し通して欲しかったところで、やはりこれらの映像が得ら
れた根拠は提示するべきだろう。その点では多少詰めが甘い
感じはした。
でもまあBBCの番組は、その後に某UFOディレクターが
「4月1日」放送という事実を隠してドキュメンタリー番組
の中で流したりしたから、本作もその内そんな扱いを受ける
のかも知れない。そのくらいには上手く作られていた。
『イップ・マン誕生』“葉問:前傳”
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02月26日(日)
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