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On the Production
by 井口健二
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■モンスターズクラブ、寒冷前線コンダクター、ある秘密、SHAME、青い塩、ほかいびと、僕等がいた、私が生きる肌、捜査官X+VES賞
監督は、伊那出身でNHKスペシャル「チベット大河紀行」
などのドキュメンタリーを制作している北村皆雄。本作の制
作では2008年に取材が開始され、2011年の完成までに足掛け
4年の歳月が費やされているようだ。
その完成された作品は、昨年11月に伊那市で上映が開始され
て県外からも観客が集まるほどの評判となり、年明けからは
長野県各地で上映が続けられ、ついに3月24日からの東京東
中野での公開が行われるものだ。
なおこの井月に関してはつげ義春がマンガでも描いているそ
うだが、僕には不知の人物だった。しかし本作は、樹木希林
によるナレーションなども判り易く、井月の人物像や当時の
状況をかなり理解できた感じがした。
人物を描いたドキュメンタリーとして優れた作品と言えるも
のだ。

『僕等がいた(前篇/後篇)』
2002年に連載が開始され、今年2月に完結する小畑友紀原作
・少女コミックの映画化。連載は10年に及んだ物語が2部作
で製作され、3月17日と4月21日から連続公開される作品を
続けて観させてもらえた。
物語の舞台は釧路の高校。そこで出会った男女の恋物語が、
7年の歳月を掛けて描かれる。始まりは2人が2学年の時、
七美は校内の女子の3分の2が好きになるという人気者元晴
と同じクラスになる。しかしそんな人気者には興味のない七
美だったが…
同じクラスには、成績優秀だが雰囲気の暗い有里と元晴の幼
馴染みの匡史もいて、七美以外の3人には過去の経緯があり
そうだ。そんな中で何も知らない七美は元晴に恋するように
なって行く。しかしそれは元晴の過去との対決だった。
映画は前篇で過去に気付きながらも恋を成就させて行く七美
の姿が描かれ、後篇では舞台を東京に移して、元晴にさらに
重くのしかかる過去と現実の厳しさが描かれて行く。それは
作られた物語ではあるけれど、なるほど原作が10年も続いた
という感じはしたものだ。
出演は、2011年1月紹介『婚前特急』などの吉高由里子と、
2009年11月紹介『人間失格』などの生田斗真。
吉高は、2008年6月紹介『蛇にピアス』も観ているが、今ま
では何となく作品の話題性が先行している感じだった。しか
し本作では、特に前篇で高校生を演じる姿の初々しさに演技
力を感じさせられ、さすがに蜷川幸夫が認めた女優という感
じがした。
他には2010年3月紹介『さんかく』などの高岡蒼佑、2011年
12月紹介『ワイルド7』などの本仮屋ユイカが共演。また比
嘉愛未、小松彩夏、柄本佑、須藤理彩、麻生祐未らが脇を固
めている。
監督は、2010年1月紹介『ソラニン』の三木孝浩。脚本は、
2004年に『め組の大吾』のテレビ化などを担当した吉田智子
が手掛けている。また前篇、後篇の各エンディングテーマを
Mr.Childrenが手掛けているのも話題になりそうだ。

『私が、生きる肌』“La piel que habito”
2009年11月紹介『抱擁のかけら』などのスペインの巨匠ペド
ロ・アルモドバル監督による最新作。1月紹介の『長ぐつを
はいたネコ』では声優を務めていたアントニオ・バンデラス
が、1989年『アタメ』以来となる監督とのコラボレーション
を実現している。
そのバンデラスが演じるのは整形外科医。学会でも発表を行
う医師は皮膚移植の世界的権威とされているが、その移植皮
膚の強化のため、彼はヒト遺伝子に関る禁断の研究も進めて
いるようだ。
そんな彼の家の2階には全身をボディタイツに包んだ1人の
女性が幽閉されていた。その女性の正体は…。それは6年前
の忌まわしい事件へと繋がって行く。そしてそこに、老メイ
ドの粗暴な息子なども絡んで物語は繰り広げられる。
『抱擁のかけら』の時にも書いたが、アルモドバルの作品は
常にフィクションの面白さに溢れている。本作には、ティエ
リー・ジョンケというフランスのミステリー作家の原作はあ
るようだが、それがアルモドバル流のトリッキーな物語に仕
上げられている。
しかも先に「禁断の研究」と書いたが、そこには『フランケ
ンシュタイン』にオマージュを捧げているような雰囲気もあ

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02月19日(日)
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