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On the Production
by 井口健二
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■シネマ歌舞伎・天守物語/海神別荘、マリリン・7日間の恋、ヘルプ・心がつなぐストーリー+年頭挨拶・ベスト10
 4位はここに挙げることのできなかった前年度公開のオリ
ジナルと合わせての評価としたい。また5位はクリエーター
が思い切りやりたいことをやったという感じの作品で、トリ
ッキーな物語と共に楽しめた。
 6位は今回唯一の日本映画となったが、無理にハリウッド
に対抗するのではなく、分をわきまえて日本的ファンタシー
を作り上げている。そんな感じが好ましかったものだ。
 7位にはハリウッドのフランチャイズ作品を久し振りに選
んだ。マーヴェルとワーナーのアメコミヒーローは、2008年
の『ダークナイト』で止めを刺された感じがしたものだが、
本作は元々アメコミではないし、特に前半の物語の捻りが満
足できたものだ。
 8位は本格ホラー作品。4位も一応はジャンル作品だが、
こちらは本格として楽しめた。日本映画でも物真似が続出の
スプラッターにはかなり食傷気味になってきたところでの、
この作品の登場は嬉しかった。
 9位は、まともな芸術映画だったのかも知れないが、SF
として充分に楽しめた。特に火星旅行が正面から描かれてい
たのは嬉しい驚きだったとも言える。そんな思いで9位に選
んでみた。
 10位はありがちな話で、実は年明けの公開になるイギリス
映画『パーフェクト・センス』(2011年11月紹介)の方が似
たテーマでは捻りもあって楽しめたのだが、ここ何年かよく
似た映画が続いている中では、最もテーマを真正面から捉え
ているということで評価したいと思った。
 そして番外として日本映画を1本選んでおく。この作品は
SF/ファンタシーではないが、映画を彩るCGIやVFX
の使い方が巧みだったもので、このようなCGIでござい、
VFXでございの作品は、日本映画ではなかなか成功しない
が、この作品は気持ち良く観られた。
 なお、外国映画とSF/ファンタシー映画で作品が重なっ
ていないのは、出来るだけ多くの作品を紹介したいと考えた
ためで、作品に優劣があるということではないので、その点
をご了承ください。
 と言うとで、SF/ファンタシー映画の1位の作品につい
てもう少し書かせてもらう。なお以下はほとんどネタバレな
ので、映画を観ていない方は気を付けてください。

『ミッション:8ミニッツ』“Surce Code”
この作品について、一般にはパラレルワールドものと思って
いる人が多いようだが、僕はそうではないと考えている。
確かに物語の中ではシステムの説明として「パラレルワール
ドのようなもの」という台詞があり、観客もそうだと思い込
まされるが、実はシステムが働いている間はそうであったと
しても、最終的に主人公が行くのは過去の世界であり、彼が
行ったのは歴史の改変なのだ。
僕がそう考える根拠は、仮に主人公の最後の行動がパラレル
ワールドでの出来事だったとしたら、主人公は8分の経過後
に元の世界に戻されたはず。しかしそうならなかったのは元
の世界、つまりその時点でのパラレルワールドが存在してい
なかったからに他ならない。
これをさらに説明すると、主人公が当初行っているミッショ
ンは、確かにシステム内に構築されるパラレルワールドでの
行動だ。ただしこの時点では時間を遡っているのではなく、
単に各時点以降に過去が再構築された世界で行動しているに
過ぎない。
しかし最後に主人公が向かうのは正しく時間を遡った過去の
世界だ。ではこのような時間旅行がなぜ可能になったかと言
うと、これはジャック・フィニイの『ふりだしに戻る』や、
1980年の映画『ある日どこかで』に描かれた精神的なタイム
トラヴェルが発動したと考えられる。こうして主人公は最後
に実際に時間を遡り、過去を改変してしまうのだ。
因に『ある日どこかで』の設定は明確ではないが、『ふりだ
しに戻る』では過去が改変されたことになっている。
ということで僕はこの作品を歴史改変ものと考えるのだが、
これではもう一つ別の問題が生じてしまう。それは主人公が
過去で乗り移った先の元の人格がどうなっているかというこ
とだ。

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01月01日(日)
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