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On the Production
by 井口健二
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■戦火の馬、善き人、すべての女に嘘がある、ヒューゴの不思議な発明、三国志英傑伝・関羽、ハンター、英雄の証明、きつつきと雨+年末挨拶
が監督していたが、最近はチョンも共同監督に名を連ねてい
るものだ。

『ハンター』“The Hunter”
イギリスオブザーバー紙が、「21世紀の21人の作家」の1人
に選んだジュリア・リーの原作で、1999年に発表された小説
の映画化。稀少生物を求めて、未開の大自然に挑むハンター
の姿を描いたオーストラリア映画。
主人公の男性は、医薬会社の依頼を受けてタスマニア島に降
り立つ。その目的は1936年に絶滅したとされるタスマニアン
タイガー。その目撃情報が寄せられ、会社はその生物が持つ
新規な毒素に関わるDNAの採取を傭兵ハンターの彼に命じ
たのだ。
こうして島に降り立った主人公は会社が指示した一家の貸間
にベースを置き、未開の森林地帯に分け入って調査を開始す
る。しかしそこは森林伐採業者と環境保護団体とが激しく対
立している場所でもあった。
そして環境保護団体の手先と見做された主人公は、団体の中
心人物でもあった父親が行方不明になっている一家と共にそ
の矢面にも立たされることになるが…。そこには彼の雇主で
ある会社の別の思惑も関っていた。
何しろタスマニア島の大自然がこれでもかと言うくらいに出
てくる作品。その大自然の中で父親が行方不明になっている
一家の幼い姉弟や母親との交流が描かれる。それは孤独なハ
ンターの心を徐々に溶かす一方で、大自然の厳しさを教える
ものでもある。
出演は、昨年9月紹介『デイブレイカー』でも共演している
ウィレム・デフォーとサム・ニール。2003年12月紹介『タイ
ムライン』に出演のフランシス・オコナー。それに子役のモ
ルガナ・デイヴィスとフィン・ウッドック。
脚本のアリス・アディスンと、監督のダニエル・ネットハイ
ムは共にテレビ界の人のようだが、どちらも手堅い仕事をし
ている感じだ。また製作は、今年11月紹介『アニマル・キン
グダム』のヴィンセン・シーハンが務めている。
映画にはタスマニアンタイガーの実際の記録映像なども挿入
されて、この絶滅したとされる生物への思いも感じられる作
品。その野性生物の尊い命が人間の醜い争いの中で奪われて
行く哀しみも描いている。

『英雄の証明』“Coriolanus”
シェイクスピア最後の悲劇と呼ばれる「コリオレイナス」。
その物語の舞台を現代に移して描いたレイフ・ファインズ初
監督作品。
最近では『ハリー・ポッター』のヴォルデモート卿としても
知られるファインズは、元々はイギリス王立演劇アカデミー
の出身で、2003年にはロイヤル・シェイクスピア・カンパニ
ーにも参加している。
そのファインズが初監督作品として選んだのは、ローマ時代
を背景にした2人の戦士の闘いの物語。しかも本作はシェイ
クスピアをそのまま描くのではなく、2000年『グラディエー
ター』などジョン・ローガンの脚色で、驚くような作品に作
り変えられている。
映画の時代背景は現代。しかしローマには独裁者がいて、そ
のローマに向けて隣国からは近代装備の軍隊が侵略を仕掛け
ている。つまりこれは一種のパラレルワールドのような舞台
設定。そしてその舞台の中で、正にシェイクスピアが現代劇
として甦っている。
台詞の多くはシェイクスピアのそのままかとも思わせるが、
登場人物たちの演説や弁論などで素晴らしい言い回しが次々
に述べられる。そこには政治劇のような様相もあって、詭弁
のような弁論には現代政治家の姿も観えて来る。
その一方で戦闘のシーンはセルビアやモンテネグロで撮影さ
れたもので、戦火の爪痕が残る市街地でのシーンには正に慄
然とするものがあった。これには戦争を利用している点で釈
然としないものもあるが、これも戦後復興の一環と考えるな
ら良しとしよう。
出演は、ファインズのコレオレイナス役に加えて、その宿敵
オーフィディアス役にジェラルド・バトラー、コレオレイナ
スの母親役にヴァネッサ・レッグレイヴ、妻役に今年6月紹
介『ツリー・オブ・ライフ』のジェシカ・チャスティン。
他に『ボーン』シリーズのブライアン・コックスや、1996年

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12月25日(日)
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