ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460133hit]
■Dフェアリー、運命の子、チベット犬、Lアサシン、フライ・オブD、ツィゴイネル…/陽炎座、おかえりはやぶさ、Aキングダム+Star Trek
は判るが、細部はやはり理解し切れなかった。しかし一緒に
鑑賞した年上の評論家の人たちと話しても、「清順は理解で
きない」という意見が多いから、結局そういう評価で良いも
ののようだ。
その1作目の『ツィゴイネルワイゼン』は、内田百フの原作
を基に、士官学校教授の主人公とその元同僚で無頼の男が、
旅先で出会った芸者を巡っての怪しい物語が展開される。そ
れはサラサーテ自身の演奏による「ツィゴイネルワイゼン」
のレコード盤に吹き込まれた怪しい音声にも関わる。
出演は、原田芳雄、大谷直子、藤田敏八、大楠道代。他に、
麿赤兒、樹木希林らが脇を固めている。
因に作品は第4回日本アカデミー賞では、作品賞、監督賞、
主演男優賞(藤田)、主演女優賞(大谷)、助演女優賞(大
楠)、脚本賞(田中陽造)、照明賞(大西美津男)、撮影賞
(永塚一栄)、美術賞(木村威夫)などを受賞した。
2作目の『陽炎座』は泉鏡花の原作を基にしたもので、新劇
の劇作家を主人公に、病院へ続く石段の下で出会った女と、
主人公のパトロンの富豪やその妻、さらにアナーキストの男
などを巡る物語が展開される。
出演は、松田優作、大楠道代、中村嘉葎雄、楠田枝里子、原
田芳雄、加賀まりこ、大友柳太朗、麿赤兒。因に、大楠、原
田、麿は「浪漫三部作」の全てに出演している。
また本作は第5回日本アカデミー賞で助演男優賞(中村)、
助演女優賞(加賀)、脚本賞(田中)、撮影賞(永塚)、照
明賞(大西)などを受賞した。
物語は何れも因果関係や結末などが明確に示されるものでは
なく、観客はその流れの中での個々のシーンの美しさや奇抜
さに翻弄されることを楽しむもの。それは耽美主義とも違う
一種独特の「清順美学」だったようだ。30年を経て僕が得た
結論はそういうところだ。
『おかえり、はやぶさ』
2010年6月13日、彗星「イトカワ」からの帰還と採取カプセ
ルの回収に成功した宇宙探査機「はやぶさ」の飛行を見守っ
た人々の姿を描いた3D映画。
物語の中心は、親子2代で無人探査機の開発に携わっている
一家。その息子は「はやぶさ」の生命線とも言えるイオンエ
ンジンの開発チームの若いエンジニア。そして父親は2003年
に周回軌道への投入断念に終った火星探査機「のぞみ」の計
画責任者だった。
そんな父親の失敗を目の当りにした主人公は、「これがラス
トチャンスだ。成功するしかない」という使命のもと「はや
ぶさ」の運行に関って行く。しかしそこには、エンジントラ
ブルや通信途絶など、様々な難関が待ち構えていた。
「はやぶさ」の計画が成功したか否かという点についてはい
ろいろ意見もあるだろうが、少なくとも彗星に軟着陸した後
に地球に帰還し、カプセルを回収したという飛行そのものは
完全に成し遂げたと言える。本作はその飛行の全容をかなり
克明に描いたものだ。
しかもその映像が3Dで再現される。実は先に「はやぶさ」
の飛行の模様をCGIで再現した作品を渋谷のプラネタリウ
ムで鑑賞したが、その折にもこれが3Dだったらどんなに素
晴らしいかと想像した。それが今回は観られるものだ。
そしてそれを支えた人々のドラマも、それはフィクションの
部分が多いものではあるが、嫌みな感じでもなく巧みに作ら
れていた。なおこの実写部分はちゃんと3Dカメラで撮影さ
れているので、自然な3Dを楽しむことができる。
因にドラマ部分の出演は、藤原竜也、三浦友和、杏。そして
その脇を、前田旺志郎、森口瑤子、ココリコ田中、カンニン
グ竹山、豊原功補、宮崎美子、大杉蓮、中村梅雀らが固めて
いる。
しかし本作では、その人間のドラマに勝るとも劣らないと言
えるドラマティックな映像がCGIで描かれている。
その中でも、クライマックスとなる帰還した「はやぶさ」が
オーストラリア上空で放出したカプセルを追い掛けるように
飛行しながら徐々に崩壊して行く姿は、実写と3DCGIで
作り出された荘厳とも言える映像で、これは見事に感動的な
ものになっていた。
[5]続きを読む
11月27日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る