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On the Production
by 井口健二
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■「フランス映画祭2011」アーサー3、Chantrapas、消えたシモン・ヴェルネール、マムート、匿名レンアイ相談所、短編集+解説
歌う“I Have Confidence”と、ポールブールドが歌う「黒
い瞳」も心地良かった。
なお本作は、フランスでは昨年のクリスマスシーズンに公開
されてスマッシュヒットを記録したそうだ。
『フランス映画祭・短編集』
毎年「フランス映画祭」では最新の短編作品が上映されてお
り、今回は以下の6作品が選ばれている。
「ロープ」“La Femme à cordes”(監督:ヴラディミール
・マヴニア=コウカ/アニメーション作品)
カーニバルを訪れた男が、特別な出し物に招待される。それ
はロープに支えられた1人の女性が出演しているものだった
が…。今回上映の中で唯一ファンタスティックな内容の作品
だが、結末がちょっと曖昧すぎる感じがした。
「世界中がジュ・テーム」“Tout le monde dit je t'me”
(監督:セシル・デュクロック、出演:ロマンヌ・バロン、
ロラ・イテアヌ)
少女2人が「ジュ・テーム」という言葉の意味について議論
をしている。2人の会話だけで成立している作品で、多分に
実験的な作品。まあこういうものが1本ぐらいはあってもい
いが、それ以上の意味合いは感じられなかった。
「直立不動の男」“Un homme debout”(監督:フエッド・
マンスール、出演:サミュエル・ジェイ)
1人の男が町に戻ってくる。男には町の人々の大半が冷たい
態度を示す。男は2人の女性が気に掛かってるようだ。男は
何故に町の人たちから嫌われるのか、男と2人の女性との関
係は…謎が徐々に解き明かされて行く。
「ピアノ調律師」“L'accordeur”(監督:オリヴィエ・ト
レイナー、出演:グレゴワール・ルプランス=ランゲ)
ピアニストを目指していた男が登竜門のコンテストで失敗、
やむなく調律師の道を選ぶ。しかし男はそこで盲目を装い、
そのため彼の目の前ではいろいろな人間の本性が演じられる
ようになる。
「娼婦になっていたかも」“J'aurais pu être une pute”
(監督:バヤ・カスミ、出演:ヴィマラ・ポンス、ブリュノ
・ボタリデス)
ホームセンターで剪定鋏を買おうとしている若い女性。しか
し彼女はその場で気を失ってしまい、中年の男性が彼女を助
けるが…。話をする内に徐々に彼女の緊張の理由などが明ら
かにされて行く。
「エリーズ」“La Noyée”(監督:マチュー・イボー、出演:
マリー・リヴィエール)
1人暮らしの母親と帰省した息子の物語。久しぶりに会った
2人はなかなか意志疎通ができないが、最近母親の身近に起
きた出来事の経緯を追う内に、徐々に2人の心が解きほぐさ
れて行く。
短編映画というのはなかなか観る機会が少ないが、映画祭な
どで最新の作品が観られるのは嬉しいものだ。そして今回選
ばれた作品もそれぞれドラマティックであり、個々には面白
い作品が揃っている。
ただ僕としては、全体的にはちょっと物足りなさを感じた。
それは今回選ばれた中に風刺性を持った作品が無かったこと
にもよる。僕はそういうものの中から革新的な作品も生れる
と考えるので、そういった作品も観たかったところだ。
* *
今回の「フランス映画際2011」では、長編12本と短編集が
上映される。その中からここでは、長編5本と短編集を紹介
したが、上記以外で上映される内の『この愛のために撃て』
『ハートブレイカー』『セヴァンの地球のなおし方』は日本
での一般公開が決まっているものだ。
しかし今回は、日本公開が未決定の『美しき棘』『6階の
マリアたち』『トムボーイ』『パリ猫の生き方』の4本を観
ることができなかった。しかも僕自身が会期中は所用で会場
に行くことができず、このまま見逃す可能性の高いのが残念
な事態となっている。
ところで今回の映画祭に出席するフランス代表団は7人。
例年20人前後が来日するのに比べるとかなり少人数だが、そ
の原因は、フランス政府が日本、特に関東地方の東京で行わ
れる映画祭への参加を自粛するように指示を出したとの噂も
流れている。
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06月18日(土)
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