ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460145hit]
■女殺油地獄、晴れた青空、大鹿村騒動記、TFDSM(特)、インシディアス、明りを灯す人、田中さん/ラジオ体操、極道めし+Lone Ranger
もするが…。彼が設置したテレビには首都で行われている反
政府デモのニュースなども報じられている。
舞台のキルギス共和国は、1991年に旧ソ連から独立したもの
の、旧ソ連の衛星国の悲しさで殆ど産業が育っておらず、独
立宣言後も経済状態は最貧国のレヴェル。そのため政変が繰
り返されており、映画に出てくるのは2005年のデモの様子だ
そうだ。
しかしそんな国家状態の中でも希望を持って、未来に明りを
灯そうとしている人がいる。そんな苦しい中での希望を描い
た作品だ。
因に、本作の英語題名は“The Light Thief”だそうで、映
画の内容はある意味それがずばりという感じではある。しか
しそれを直訳して日本語の題名に相応しいものかどうか。今
回の邦題は映画の他の部分も含めて良く考えられたというと
ころだ。
脚本・監督は、1998年『あの娘と自転車に乗って』などのア
クタン・アリム・クバト。因に監督の姓は、以前はロシア名
で<アブディカリフ>と呼ばれていたが、本作からはキルギ
ス名で<アリム・クバト>になったそうだ。
また監督は、本作では映画初出演で主人公の「明り屋さん」
も演じており、その演技では2010年キノショク映画祭の主演
賞も受賞している。
『田中さんはラジオ体操をしない』
“Tanaka-san Will Not Do Calisthenics”
不当解雇の撤回を求めて25年間、沖電気八王子工場(現在は
分社化されて沖セミコンダクタになっている)の正門前で単
独で闘争を続けている田中哲夫氏の姿を、オーストラリア人
の監督マリー・デフロスキーが追ったドキュメンタリー。
田中氏は25年前、社長の交替で開始された毎朝のラジオ体操
の強制実施に反対し、職場で座り続ける行動を始める。それ
に対して会社側は、その間は退室することを求めるがそれに
も応じず。その結果の遠隔地への転任命令を拒否したために
解雇されたという。
しかしそれは工場内に蔓延する差別やいじめの結果であり、
以来、正門前でギターを持って歌ったり、ビラを配ったり、
さらに株主総会で追求するなどの闘争を繰り広げてきた。そ
んな田中氏の姿が、闘争以外での生活ぶりや家族・支援者の
声も交えて描かれる。
これは間違いなく題名にある通りのラジオ体操の強制に従わ
なかったための解雇であり、それは現在、教育現場で進行中
の国旗・国家への強制と同根のものだ。オーストラリア人の
監督はちゃんとそこまで目配りして作品を作っている。
その一方で、25年も掛かれば当然家族も年を取って行く訳だ
が、そんな田中氏の2人の息子の気持ちにも足を踏み入れ、
恐らくは子供の目には変人と写った父親の姿に対して、今は
ちゃんとそれを理解している彼らの姿も描いている。
以前は従順勤勉で鳴らした日本人労働者。しかしそれは高度
成長期の景気の良かった時代の話。今の状況はさらに厳しく
差別やいじめが横行しているはずだ。それが外国人の目には
どのように写ったか。
ただし本作は、労働争議を扱うものではなく、田中氏個人の
生き様を描いているものだ。
それにしても、映画の中では新聞報道の記事なども出てくる
が、何故これが日本人の手で映画にならなかったかには疑問
も生じた。公害問題や福祉問題など、最近観たドキュメンタ
リーも何本か紹介しているが、日本人は何処か労働争議には
冷たい感じもしてきた。
因にこの作品は2008年の製作。2009年の「山形国際ドキュメ
ンタリー映画祭」で正式上映された他、同年開催の「カナダ
国際労働者映画祭」でグランプリを獲得しているそうだ。
『極道めし』
刑務所の雑居房を舞台に、受刑者たちがおせち料理の一品を
賭けて自らの生涯最高の食事を語り合うという土山しげる原
作漫画の実写映画化。
主人公は、新入りの受刑者。彼が入った雑居房には4人の先
住者がいて和気藹々としているが、主人公はそういう中には
入っていけない性格のようだ。そこで先住者たちは主人公は
放置したままあるイヴェントを開始する。
それは味気ない刑務所の食事の中で、唯一楽しみな正月のお
[5]続きを読む
06月12日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る