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On the Production
by 井口健二
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■男子高校演劇、ムカデ人間、シャンハイ、アイ・アム bS、ツリー・オブ・ライフ、ペーパー・バード、親愛なる…、ふゆの獣+The Hobbit
インパクトが、リピーターの観客を生じさせることも『2001
年…』と同様になりそうな、そんな感じのする作品だ。
実は、今年のカンヌでは、ラース・フォン=トリアー監督の
“Melanchlia”という作品が少しSF的な内容で期待してい
たのだが、いろいろあってしまった。しかしパルム・ドール
に輝いた本作は、それに上回る作品だったと言えそうだ。

『ペーパー・バード/幸せは翼にのって』
                 “Pajaros de papel”
1930年代のスペイン内戦とその後のフランコ政権時代を背景
にした人間ドラマ。
主人公はマドリッドの劇場に立つボードビリアンの男性。妻
と子もいて内戦中の不自由な中でも幸せな暮らしだったが、
戦火によって妻子が失われる。それから1年後、内戦は集結
したものの独裁政権による弾圧で表現の自由もままならない
劇場に、男が戻ってくる。
その劇場のリハーサルには、芸人だった両親を戦火で亡くし
た幼い男の子などもいて男の心を和ませてくれるが、男がそ
の1年間何処で何をしていたのかは不明。そして男には反政
府組織の人間らしい人物も近寄ってくる。
一方、軍部が支配する独裁政権の中で文化関係を担当する武
官が劇場の取り締まりに現れる。そして主人公を目撃した武
官は密かに部下の1人を劇場に潜入させる。さらに劇団は地
方巡業に出発することになるが…
脚本と監督のエミリオ・アラゴンは、スペインでは知らない
人はいない、と言われるほどの代々続く芸人一家の出身。実
は彼の両親は第2次大戦後のスペイン内乱期にキューバに逃
れ、監督自身もキューバで産まれている。
しかしその後に両親と共に帰国し、父親と一緒に始めたテレ
ビ番組で人気を博した。そして本作のアイデアは、その番組
に出演した年配の芸人たちの語る内戦時代の思い出話から産
まれたとのこと。従ってエピソードの多くは実話に基づくそ
うだ。
出演は、1984年アカデミー賞外国語映画部門にノミネートさ
れた『カミーラ』などのイマノル・アリアス、2011年11月紹
介『抱擁のかけら』などのルイス・オマールとカルメン・マ
チ、そして2008年9月紹介『永遠のこどもたち』などのロジ
ェール・プリンセプ。
さらに『永遠のこどもたち』などのフェルナンド・カーヨ、
撮影中の“[REC]3”に出演のディエゴ・マルティンらが脇を
固めている。
劇中で繰り広げられるボードビルの舞台も楽しめる作品。そ
の中で歌われる歌曲「フランコとは暮らせない」は、スペイ
ンのアカデミー賞「ゴヤ賞」の主題歌賞にノミネートされた
そうだ。

『親愛なるきみへ』“Dear John”
2004年11月紹介『きみに読む物語』などの原作者ニコラス・
スパークスが2006年に発表した小説(邦訳題:きみを想う夜
空に)を、4月紹介『ザ・ホークス』などのラッセ・ハルス
トレムの監督で映画化した2010年の作品。
2001年の夏から始まる物語。主人公のジョンは兵役の合間に
訪れた故郷で1人の女性と巡り会う。そして学生の身であり
ながらハリケーンで崩壊した家を再建したり、自閉症の子供
の世話をするなど熱心に行動する彼女サヴァナとジョンは、
瞬く内に恋に落ちる。
しかしジョンは2週間後には任地に戻らなければならず、サ
ヴァナも大学に戻らなければならない。それでも2人は強く
将来を誓い合い、ジョンは残り1年の任務を終えたら除隊し
て、サヴァナの卒業式に参列すると約束する。
ところが、その年の9月11日の出来事が2人の運命を大きく
変えてしまう。ジョンは戦友と共に任務の延長を申請せざる
を得なくなり、たった18時間の休暇でサヴァナの許を訪れた
ジョンは、さらに1年待ってくれと頼みサヴァナも理解する
のだったが…
任地が秘密であるため手紙で近況の報告をし合っていたジョ
ンとサヴァナ。ある日そのサヴァナから衝撃の報告がジョン
に届く。彼女が別の男性と結婚するというのだ。その手紙に
返事を書けないジョン。そしてそのまま手紙は跡絶えてしま
う。
スパークスの作品は大体が謎解きを伴うが、本作もそんな感

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06月05日(日)
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