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On the Production
by 井口健二
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■軽蔑、サンクタム、塔の上のラプンツェル・3D、Lily+バンコク遠征記(後編)
は事前に入手したバンコク市街の地図の中で気になっていた
「ジム・トムプスンの家」を訪ねた。このジム・トムプスン
という名前は、前回紹介した映画『キラー・インサイド・ミ
ー』の原作者と同じもの。それでひょっとしたら作家の所縁
の場所かと考えたのだが、行ってみるとそこはシルク・キン
グとも呼ばれた資産家の自宅跡で、タイの文化財の保護にも
尽力したという人の記念館のようなものだった。
 従って作家とは無関係だったのだが、ここでふと、以前に
親しかった翻訳家の黒丸尚が生前トムプスン原作の『グリフ
ターズ』の翻訳をしていたころに、「バンコクに家があると
聞いたが、違う人だった」というようなことを話していたの
を思い出した。でもそれは、直前に映画を観なければ作家の
ことは思いつかなかったし、その家を訪問しなければ黒丸の
言葉も思い出さなかったはず。そんなことで何となく不思議
な巡り合わせを感じてしまったものだ。
 そこからはすぐ裏の運河沿いを歩き、スカイトレインの別
の駅からサイアム駅に戻った。そしてキャラクターが合掌で
迎えてくれるマクドナルドで軽い昼食。メニューは日本でも
お馴染みのポークバーガーをコーク、ポテトのセットで頼ん
だが、これがSAMURAI PORK BURGERと名付けられていて、何
故侍なのか…。しかし味は日本と変わりなかったようだ。
 その後は再度ナショナル・スタジアム駅に向かい、事前に
チームに申し込んでおいたチケットを受け取り、ド派手な選
手バスを出迎えたりしてメインスタンドで試合を応援した。
 ここでは、会場で知り合ったタイには何度も来ているとい
うジャーナリストの人と一緒に行動したが、試合前のセレモ
ニーなどでもタイ語以外のアナウンスメントは一切なしで、
突然国歌が流れたときには、その人のアドヴァイスで応援団
を静粛させるなど、いろいろ活動させて貰えた。
 因にスタジアムはペットボトルの持ち込みが禁止で、腕に
再入場のスタンプを押して貰って外に出て買った飲料は、コ
ップかポリ袋での持ち込み。その際には事前の忠告に従って
氷は入れないでおいて貰ったが、それでも良く冷えた水の温
度は結構保っていたようだ。
 試合は、リーグ戦の開幕を1週間後に控えたタイのチーム
と、まだ3週間以上ある日本のチームとでは仕上がりの状態
が全く異なり、しかも相手チームには外国籍の選手が5人ま
で認められていて、能力の高い選手が半数近くいるとゲーム
運びも難しかったようだ。その上、その外国籍の選手が、フ
リーキックの際にキッカーの目前1mぐらいに立ちはだかっ
ても、主審が排除しないというローカルルールで、これでは
勝負にもならない感じだった。それで試合は2−1で負けた
が、そんな中でもルーキー選手が1得点を挙げてくれたのは
収穫だったと言える。
 さらに試合後は、会場で知り合ったジャーナリストの人に
誘われて日本料理の居酒屋に行き、タイのビールと日本のス
ーパーなどで売られている大元の焼鳥や、その他の軽めのつ
まみを飲食したが、以前に海外の日本料理屋で飛んでもない
「和食」を食べてきた経験からすると、至極真面な料理だっ
たものだ。そんな訳で夜も少し遅くなってからホテルに戻っ
たが、ここでまたちょっとスリルを味合わされた。
 というのは、駅からホテルまでは上記のように10数分の道
程なのだが、夜も9時を過ぎると屋台街はまだ賑わっている
が、商店街はシャッターが閉まって昼間とは雰囲気が全く違
う。それにホテルの前が一方通行で、そこに向かって曲がれ
ばいいと思っていたのが車通りが減り、さらに道路標識も読
めないと一通かどうかも判らなくなる。これが誤算だった。
 それでも最初は暖かい夜道を気楽に歩いていたら、突然背
後から唸り声が聞こえてきた。それで振り返ると、シェパー
ド風の犬が後に10匹ほどを従え牙を剥いて構えている。実は
タイは狂犬病の汚染地区でこれも事前に注意を受けていた。
でもさすがに市街地の犬は涎を垂らしている風でもなく、病

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02月27日(日)
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