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On the Production
by 井口健二
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■市民ポリス69、神々と男たち、ブルーバレンタイン、トゥルー・グリット、悲しみのミルク、アトムの足音が聞こえる+ニュース
叔父には映画監督ルイス・リョサや、1990年の大統領選挙を
フジモリと争った政治家であり、2010年ノーベル文学賞に輝
いた南米を代表する反骨の文学者マリオ・バルガス・リョサ
もいるという一族の才媛が、その第2作とした作品だ。
出演は、監督の第1作にエキストラとして出演し見出された
というマガリ・ソリエル。映画はミュージカルかと思うよう
な歌唱の連続で始まるが、それら歌のほとんどはソリエルが
実際に即興で歌っているものだそうだ。
そんな歌を愛する人々が悲しみの縁に沈んでいる。ここにも
僕らの知らない世界が存在しているようだ。

『アトムの足音が聞こえる』
2007年9月に『コンナオトナノオンナノコ』を紹介している
富永昌敬監督が、サウンド・クリエーター大野松雄氏の姿を
追ったドキュメンタリー。
大野氏は1930年東京の神田生まれ。文学座の研究生としてこ
の世界に入るが、それは役者を目指したからではなく、単に
「大学生が勉強を嫌になったから」とのこと、そして舞台美
術などの裏方をするが、やがてNHK効果団に入局する。
そこで当時ドイツで生まれたばかりの電子音楽に巡り会い、
1年ぐらいでNHKを退局、フリーの音響技師として何本か
の実験映画に関った後、1963年に始まった『鉄腕アトム』の
音響効果を手掛けることになる。
その後は東京の青山にスタジオを構え、そこは若手芸術家の
溜まり場ともなって行くが、ある日突然姿を消したという。
それは資産を騙し取られて借金取りに追われていたなどの話
も語られるが、本作ではその理由は追求していない。
そんな大野氏はその後は関西にいて、実はそれ以前から関っ
ていたある活動の継続に尽力していた。それは滋賀県に在る
知的障害者施設の発表会での音響の提供だった。
そして本作では、2009年東京国際アニメフェアでの功労賞受
賞の報告や、同年草月ホールで行われたライヴ公演の様子な
どが記録されている。
試写の後で宣伝の人から監督の名前で観に来たのですかと聞
かれて、「いえいえアトムの足音です」と答えてしまった。
それほどにあの足音は印象に残っていたものだし、実際に大
野氏の名前も、多分SFサウンドに詳しい友人の情報などか
ら記憶に在ったものだ。
でもその大野氏の実際の姿は全く知らなかったし、氏が現在
も行っている素晴らしい活動のことなどは全く考え及びもし
なかった。本作は、そんな素晴らしい人物の業績を知るだけ
でも満足できる作品と言えるものだ。
また本作では、大野氏が若いサウンド・クリエーターたちと
交歓する姿なども描かれており、その中で実演される「アト
ムの足音」の誕生の原理などは、僕自身が多少は音響技術を
噛ったものとして興味深く観ることが出来た。
因に富永監督の上記の作品では、劇中に挿入されたドキュメ
ンタリー的なシーンに感心したことを紹介文でも述べていた
が、本作でその資質は充分に活かされていたようだ。
        *         *
 今回のニュースは、25日発表されたアメリカアカデミー賞
のノミネーションで、まず10本の作品賞には、『ブラック・
スワン』“The Fighter”『インセプション』『キッズ・オ
ールライト』『英国王のスピーチ』“127 Hours”『ソーシ
ャル・ネットワーク』『トイ・ストーリー3』『トゥルー・
グリット』『ウィンターズ・ボーン』が選ばれた。
 一方、気になるVFX賞候補は、『アリス・イン・ワンダ
ーランド』『ハリー・ポッターと死の秘宝Part 1』『ヒアア
フター』『インセプション』『アイアンマン2』の5本で、
9日付で報告した予備候補からは“Scott Pilgrim vs. The
World”と『トロン/レガシー』が落選となった。でもまあ
これは、前回に紹介したVES賞の候補と見比べるとこんな
ものかな…という感じだ。
 以下は、このページで取り上げた作品別に紹介すると、
 1月2日紹介『英国王のスピーチ』が作品、監督、脚本、
主演男優、助演男優、助演女優、美術、撮影、衣裳、編集、
音楽、録音の12部門で最多候補。

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01月30日(日)
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