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On the Production
by 井口健二
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■180°South、シモン・ボッカネグラ、ジャンデック、バーレスク、アンチクライスト、エリックを探して、Pure+製作ニュース
には「東方の三博士」が思い浮かんだが、ウェブで検索した
ら大正〜昭和初期の宗教画家河野通勢の作品に同名のものが
あり、その通りの解釈だったようだ。
従って、この他に描かれる石臼などにも何か意味があるのか
も知れないが、そこまでは僕の理解は及ばなかった。でもま
あそんなことも考えながら観ていると、上映時間はあっとい
う間に過ぎてしまう作品だった。
実際1時間44分の上映時間は上記の2作品に比べるとかなり
短いものだが…。
物語は、幼い我が子を自らの快楽中に事故で失った夫婦を主
人公としたもので、悲嘆にくれて立ち直れなくなった妻と、
その精神の回復を試みるセラピストの夫との凄絶なドラマが
展開される。
そこに描かれるのは、極限に挑むかのような性描写であった
り、また監督自身が日本映画の『リング』にインスパイアさ
れたと語るホラー的な描写であったり…。実はここ数年は欝
病であったという監督が一気にその内面を曝け出しているよ
うな作品でもあった。
共演は『スパイダーマン』などのウィレム・デフォー。事実
上の2人劇とも言える構成の作品の中で、鬼気迫るようなゲ
ンズブールの演技を全て受け止めるデフォーの演技にも感心
した。
なおフォン=トリアー監督の次回作としては、キルスティン
・ダンスト、ゲンズブールらが共演の“Melancholia”とい
う作品がすでにポストプロダクション中となっているが、こ
の作品は、ウェブの2009年10月11日付で紹介したようにデザ
スター映画とのことだ。
『エリックを探して』“Looking for Eric”
この作品は、2009年10月20日付の「東京国際映画祭」の中で
1度紹介済なので、今回はその再録と新たな情報の追加をす
るものとしたい。まずは再録から。
2005年4月に『やさしくキスをして』などを紹介しているイ
ギリスのケン・ローチ監督による最新作。
プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(マンU)
でキングと呼ばれたサッカー選手エリック・カントナが自ら
出演している作品で、カントナは本作の製作総指揮も務めて
いたようだ。
主人公はサッカーフリークの郵便配達夫。離婚や交通事故な
どが重なって仕事にも覇気がなくなっている。しかも入院中
に彼の自宅には、前妻の連れ子たちが有象無象の仲間を引き
入れていて、何やら怪しい雰囲気にもなっている。
そんな中で、彼の仲間たちが素人セラピーを実行し、そこで
自分のカリスマがエリック・カントナであることに気づいた
主人公の前に、何とカントナ本人が現れる。そしてそのアド
ヴァイスで徐々に人生を変え始めるが…
ウッディ・アレン監督『ボギー!俺も男だ』のケン・ローチ
版とでも言えるのかな。『やさしく…』でもサッカーファン
だということは明確に判っていた監督だが、今回は選手本人
の出演も得て、華麗なゴールシーンの記録映像もふんだんに
取り込んだ作品になっている。
とは言えローチ監督作品らしく、深刻なイギリス社会の状況
は、本作でも如実に描かれているものだ。
元々サッカーチームのサポーターでもある自分としては、華
麗なカントナのプレーに酔い痴れることの出来る作品でもあ
るし、カントナが折々に放つ含蓄のある言葉には、一々頷い
てしまう作品でもあった。
でもまあ、それがサッカーが文化として根付いていない日本
では中々理解されないところもあるのだが、そこにはサッカ
ーファンでなくても理解できる夫婦や家族の問題もしっかり
と描かれているから、そういう面からでもアピールして欲し
い作品だ。
そしてカントナの華麗なプレーの連続に、映画の観客がサッ
カーも観たくなってくれると嬉しいものだが。
以上がちょっと修正した以前の紹介文だが、今回新たに判っ
た情報によると、作品は元々カントナとフランスのプロデュ
ーサーが企画したもので、その映画化にはイギリスが舞台の
方が良かろうと駄目もとでローチ監督にオファーしたのだそ
うだ。
ところがこのときのローチ監督はお気に入りのチームが低迷
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11月28日(日)
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