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On the Production
by 井口健二
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■デュー・デート、Gソシアリスム、デッド・クリフ、名前のない少年…、ヒアアフター、完全なる報復、ジーザスC、ビン・ラディンを探せ
脚本は、2009年1月紹介『フロスト×ニクソン』などのピー
ター・モーガン。
映画は巻頭にCGIによる津波のシーンがあり、それは予告
編でも観られるようにかなりの迫力だが、映画の全体はその
ような派手なものではなく、もっと地道なヒューマンドラマ
を描いている。その辺がちょっとそぐわないような感じもす
る作品になっていた。
他にも爆破テロ事件のシーンなども登場するが、僕にはこの
テーマならもっと静かな雰囲気で描いても良かったようにも
感じられたものだ。でもまあ最近のハリウッド映画はこれが
期待されてしまうのだろうが。

『完全なる報復』“Law Abiding Citizen”
最愛の家族を犯罪被害で失った主人公が、その犯罪者を許し
た司法組織そのものに挑んで行く姿を描いた人間ドラマ。
主人公は妻と娘と3人暮らしの平凡な家庭を持っていた。そ
の生活を突然の悲劇が襲う。家に侵入してきた2人組の暴漢
が主人公に重傷を負わせ、その目の前て妻と娘を殺害したの
だ。それをなす術もなく観ていた主人公。
やがて2人の犯人は逮捕される。ところが彼らの取り調べが
始まったとき、事態は思いも拠らないことになって行く。主
犯格だった男が検察との司法取り引きに応じ、もう1人を死
刑にする証言を行う代りに、自身は軽微な罪で許されてしま
ったのだ。
そこにはもちろん主人公の目撃証言もあったのだが、心神耗
弱状態だった主人公の証言は証拠として採用されなかった。
そのため2人とも無罪になってしまうことを恐れた担当検事
が、死刑を免れなかったはずの主犯の男との取り引きをした
結果だった。
そして10年が何事もなく過ぎ、上級審でも刑の確定した男の
死刑が執行されようとしたとき、主人公による報復のドラマ
が開幕する。それは刑を免れた犯罪者だけでなく、司法組織
そのものへ向けての周到に練られた報復劇だった。
正直に言ってかなり荒唐無稽な物語だ。でもヒーローコミッ
クスの映画化ではこの程度のことは当然許している訳だし、
それを生身の人間がやったからといって悪いはずがない。そ
んな微妙なバランスが見事に機能した作品と言えそうだ。た
だし映画の中では、主人公がこれを実行できる理由付けはち
ゃんと説明されていた。
それと映画の中では、「殺された奥さんと娘がどう思うか考
えろ」と諭す検事に対して、「死んだ者は何も考えない」と
言い放つ主人公の言葉が、この映画全体の方向を示している
ように思えた。見事な報復劇の描かれた作品だ。
出演は、報復に燃える主人公に『300』などのジェラルド
・バトラーと、担当検事役はオスカー俳優のジェイミー・フ
ォックス。他に、『アイアンマン』などのレスリー・ビブ、
『コラテラル』などのブルース・マッギル、『新スター・ト
レック』シリーズなどのコルム・ミーニィ、そして2008年の
『ダウト』でオスカー候補になったヴィオラ・デイヴィス。
脚本は、今年7月紹介『ソルト』などのカート・ウィマー、
監督は、2003年6月紹介『ミニミニ大作戦』などのF・ゲイ
リー・グレイ。トリッキーなアクション映画が得意の2人の
顔合せで、正しくトリッキーな作品が誕生した。

『ジーザス・キャンプ』“Jesus Camp”
キリスト教原理主義とも呼ばれているアメリカにおけるキリ
スト教会福音派の活動を批判的な立場で紹介したドキュメン
タリー。
宗教で原理と言うと、ちょっと前なら統一原理何てのも思い
浮かぶが、最近ではやはりイスラム原理主義だろう。それに
対抗している訳でもないのだろうが、アメリカで最近台頭し
ているのが、福音派と呼ばれる人々の戦闘的とも言える活動
のようだ。
福音派と言うと、進化論論争などで以前から耳にはしていた
が、最近では中絶禁止運動から一部には中東戦争支援まで、
特にジョージ・W・ブッシュ政権を支持する政治的な活動で
も注目を集めたようだ。本作はそのブッシュ政権中の2006年
に製作されている。
作品では、主にその福音派に属するフィッシャー女史という

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11月21日(日)
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