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On the Production
by 井口健二
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■第23回東京国際映画祭<コンペティション以外>
とんどなく、静けさの中でドラマが進行して行く。それなり
の面白さはあるドラマだが…本作は日本公開されるので、そ
の折また紹介したい。

『ハッピー・ポエット』“The Happy Poet”(アメリカ映画)
大学で文学を専攻の男が公園でベジタリアンの屋台を開業。
見た目は不味そうなそのサンドウィッチは最初こそ敬遠され
たが、徐々に常連客も付いてくる。しかしいろいろな問題も
発生して…登場するタマゴ抜きタマゴサンドは食べてみたく
なった。

『闇と光の門』“Two Gates of Sleep”(アメリカ映画)
文明から隔絶した山奥に住む兄弟が、死去した母親の遺体を
山に葬ろうと棺を引いて進み始める。なぜそうするのかの説
明も明確でなく、よく意味の判らない作品だったが、大自然
の風景は見事に美しく、それが堪能できる作品ではあった。

《特別上映》
『BUNRAKU』“Bunraku”(アメリカ映画)
GACKTとジョッシュ・ハートネットの共演によるアメコミ風
アクション映画。人類が絶滅の危機を経て銃器を廃止した後
の世界を背景にした物語で、アクションは主に刀剣によって
行われる。2005年『シン・シティ』ほどアートではないが、
その分ギミックにも溢れた作品になっていた。
        *         *
 作品の紹介は以上にして、以下にはその講評を書かせても
らう。
 今年の映画祭では、1週間前の事前試写から会期中まで、
映画祭関連の作品は実数で45本観ることができた。まあ1日
5本観る日が何日か続くと、何を観たかも判らなくなるとこ
ろもあるが、上記の紹介は出来るだけその日の内にメモは残
すようにして纏めたものだ。
 それで45本観ての全体の印象は、何というか今年は監督の
思い入れが強く感じられる作品が多くて、それはまあ選ぶ人
の好みでもあったのだろうが、その辺はちょっと僕の感覚に
合わない作品が多かったようにも感じた。
 それは作品の多くがHDなどのヴィデオ撮影によるもので
あったことにも繋がると思うが、撮影が手軽になった分、プ
ロデューサーや出資者といった第三者の目を介さない作品が
増えている感じで、それが監督の独り善がりのような作品を
増加させることにも繋がっていると思われる。
 ただし、そのような作品が海外の映画祭などで受賞してい
ることも事実で、それが今の映画の趨勢と言う感じでもあり
そうだ。そんなことが判るのも、映画祭の存在理由ではある
のだろう。しかし、監督の思い入れだけでそれを観客が共有
できない作品に、映画興行としての価値があるのかどうか。
僕自身は悩むところでもあった。
 そんな中で、今回紹介した作品では、『ジャック、舟に乗
る』や『ハンズ・アップ』、『神々と男たち』、『ゴースト
・ライター』、『ウインターズ・ボーン』などの欧米の作品
はさすがに映画の存在価値を示してくれるものだったし、そ
の言いたいことも観客として共有できる作品になっていた。
これらの中には日本公開されるものもあると思うが、それは
観て損のない作品だし、公開されない作品には映画祭で観ら
れたことの価値を見出したいところだ。
 その他、『ヴィック・ムニーズ』と『風に吹かれて』には
今回最高の感動を得させてもらえたし、日本での公開がどう
なるか判らない『BUNRAKU』を観る機会があったのも映画祭
の価値として認めたいところだ。
 鑑賞した作品の中には、途中で耐えられなくなった作品も
あるが、映画祭でしか観られないであろう秀作もあったし、
来年もこのような作品に出会えることを期待したいものだ。
 なお、コンペティション以外の受賞作には、
natural TIFF部門からは、
TOYOTA Earth Grand Prix『水の惑星』
  同 審査員特別賞『断崖のふたり』
アジアの風部門からは、
最優秀アジア映画賞『虹』
が選ばれ、他は上記した作品が選ばれたが、スケジュールの
関係でこれらの作品を見逃したのは悔やまれたところだ。

11月02日(火)
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