ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■隠された日記、アワ・ブリーフ・エタニティ、桜田門外ノ変、C&D3D、大江戸LD、ゴスロリ処刑人、さらば愛しの大統領+製作ニュース
戸の庶民の生活にも影響を及ぼし始める。
一方、「らくだ」の管理を任された男=半助は、クサヤ売り
の女=お葉に近づいて行くが…。実は半助も新島の出身で、
「らくだ」というのはクサヤ汁を浴びて甦った新島の人々の
死骸だったのだ。
というお話が、長唄調の「りびんぐでっどぅ」という歌に合
わせた「らくだ」の群舞などを絡めて、半助=市川染五郎、
お葉=中村七之介、他に中村獅童、中村橋之介、坂東三津五
郎、中村勘三郎らの豪華な顔ぶれにより、歌舞伎座の大舞台
で演じられる。
演出的には、回り舞台の特徴を活かした場面転換の技術など
は面白かったし、さらに回想シーンなどを見事に描き分けた
照明等の効果も素晴らしく感じられた。
ただ僕としては、立場上「ゾンビ」作品としても評価しなけ
ればならないのだが、その点ではゾンビの設定が不明確で、
特にゾンビには新鮮な人肉が必要らしいのに、その調達をど
うしているかなど疑問が残る。それに「死神」を登場させた
りした分、話が混乱している感じもした。
他にも半助の立場などももう少し丁寧に描くべきだが、元々
この点ではルール違反的な感じの展開もあって、この辺はど
うなんだろう? またクライマックスは、大掛かりなセット
の割には、結局何が言いたいのかよく理解ができなかった。
ゾンビ物ならやはり結末は全滅、若しくは現場からの脱出に
して欲しかったものだ。
甦り=「らくだ」というネーミングの辺りは面白く感じて、
それで期待もしたのだが、「らくだ」が踊るのは「看看踊」
ではないし…。引用するのならその作品へのリスペクトも、
もう少しちゃんとして欲しかった感じだ。

『ゴスロリ処刑人』
2001年に15歳で『仮面ライダーアギト』のヒロインを演じ、
その後にオシリーナの愛称でも知られるようになった秋山莉
奈主演によるスプラッターアクション作品。
母親を目の前で殺され、父親も車椅子の生活となった一家の
中で、唯一健常のまま生き延びた娘が、ゴスロリの衣裳に身
を包み、武器を仕込んだ黒いアンブレラを手に襲撃した男女
に復讐劇を繰り広げる。
物語は次から次への殺戮シーンの連続、しかもその特殊造形
を担当したのが昨年6月紹介『吸血少女対少女フランケン』
などの西村喜廣。ということで、かなり強烈なシーンは観ら
れる作品だが…。多少見慣れた感があるのは、もう少し何か
工夫が欲しい頃なのかな。
ただし本作では、特殊造形だけでなく身体的なアクションの
方も頑張っていて、主役クラスにはそれぞれ吹き替えによる
スタントも入っての、かなりしっかりしたアクションが展開
される。他にワイアーワークもかなり頑張っていろいろ観せ
てくれていた。
共演は、たけし軍団の柳憂怜、シェイプUPガールズの中島
史恵、「テニスの王子様」出身の青柳塁斗、ホリプロタレン
トキャラバン審査員賞受賞の桃瀬美咲。他にはアクション俳
優の佃井皆美、岡本正仁、白善哲。さらに北米出身のパフォ
ーマンス集団Team 2Xなどが脇を固めている。
監督、編集、アクション総監督は、スタントマン出身でアク
ション監督が本業の小原剛。監督としては2008年『芸者vs忍
者』に続く第2作のようだ。脚本は、2008年10月紹介『悪夢
探偵2』や今年3月紹介『鉄男』なども手掛けている黒木久
勝。
ただ、最近の日本映画ではこの傾向がよくあるが、本作でも
物語の設定を全く説明せずに話が始まっている。本作の場合
は、それが謎解きに繋がっている面もありはするが、状況説
明なしのいきなりドラマというのは、観客にはかなり不親切
なものだ。そこは謎解きとの兼ね合いにもなるが、それを工
夫するのが脚本家の仕事とも言える。
本作はアクションの羅列だけで成立すると思っているのかも
知れないが、このやり方では作り手の本人は判っていても、
埒外の観客には物語に入り込むのが難しい感じがする。少な
くとも僕自身はなかなか物語に入れず、その間の気分が多少
後に残った。

『さらば愛しの大統領』

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08月15日(日)
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