ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■名前のない女たち、半次郎、超強台風、ヌードの夜、蛮幽鬼、武士の家計簿、玄牝+製作ニュース・他
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『名前のない女たち』
渋谷でスカウトされた女性がAV業界で生きて行く姿を描い
た中村淳彦著ノンフィクションの映画化。
主人公は小さな建設会社で事務職の女性。口うるさい母親の
許の母子家庭で育ったせいかちょっと根暗で、男友達もなく
勤務先でも浮いた感じだ。そんな女性が、ふと降り立った渋
谷の街頭でスカウトマンに声を掛けられる。
その男は言葉巧みに彼女の気を引き、その誘いに乗った女は
AV業界に足を踏み入れることに…。そんな彼女は最初こそ
戸惑いもあったが、自らのキャラクターを作り上げたときか
ら、過去から脱皮したように積極的になって行く。
しかし業界の常として内容は次第にエスカレートし、ついに
は主演女優が自殺してしまうような過酷な作品もオファーさ
れるようになる。こんな彼女の姿に、同僚のAV女優との交
流や彼女のファンとなったオタクの行動なども絡めて物語が
進んで行く。
出演は新人の安井紀絵と、2008年7月紹介『真木栗の穴』な
どに出演の佐久間麻由。それに今年1月紹介『BOX袴田事
件』などの新井浩文、2008年2月紹介『ねこのひげ』などの
渡辺真起子、昨年7月紹介『白日夢』などの鳥肌実、2008年
8月紹介『キズモモ』などの河合龍之介等が共演している。
監督は2006年1月紹介『刺青』などの佐藤寿保。
前々回にみひろ原作の『nude』を紹介したばかりだが、
また良く似た題材の作品が登場した。映画にとってAVは正
直目の上の瘤のようにも思えるが、それを題材にするとは、
それだけAV業界の動きが目立ってきていると言うことなの
かな。
ただ、先に紹介した作品が一応はメイジャーっぽい作りで、
内容的にも多少綺麗ごとのようにも観えたのに対して、本作
はインディペンデントの手触りで、絵作りなどもそれなりの
感じがした。特に後半は、シュールな雰囲気やスプラッター
調のシーンなど、インディペンデンスの臭気がプンプンする
作品だ。
なお、映画宣伝のキャッチコピーは、「生きているふり、や
めた。」というもの、それが作品のテーマとも言える。また
主題歌に戸川純1990年の楽曲「バージンブルース」がフィー
チャーされていた。

『半次郎』
日本最後の内戦と言われる官軍と薩摩軍による西南戦争で、
西郷隆盛の側近として戦い戦死した薩摩藩士・中村半次郎の
生涯を描いた作品。
半次郎は薩摩藩の下級武士の家に生まれ、薩摩に伝わる武道
自顕流の使い手として頭角を現し、京に上る西郷吉之助(後
の隆盛)には直接同行を志願、大久保一蔵(後の利道)らに
自顕流の腕を披露して彼らの側近となる。
そして京都では長州藩や新選組との闘争で活躍、維新後は桐
野利秋と名告って陸軍少将にも任じられる。しかし明治6年
の政変による西郷隆盛の下野に伴って辞職して帰郷、やがて
西郷らと共に西南戦争を戦う。
これに、京都での豪商の娘さととの仄かな恋心や、東京での
愛人藤との暮らしなどのエピソードが加わるが、全体的には
西南戦争のスペクタクルシーンを中心とした映画の描き方と
なっている。
中村半次郎と言えば、幕末の京都で人斬り半次郎の異名でも
知られるが、実際に彼は戦争以外で人を切ったのは唯1人、
それも正当な理由が有ってのことだそうだ。映画ではその辺
のエピソードも取り込んで、半次郎の真の姿を描こうとして
いるものだ。
因に真の半次郎の姿は、豪放磊落な人柄で若い志士たちをよ
く纏め、彼らからも慕われていたということのようだ。ただ
まあ、映画ではさとが女1人で戦場に赴くなど、ちょっと首
を傾げたくなるシーンも登場したものだが。

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08月08日(日)
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