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On the Production
by 井口健二
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■死刑台のエレベーター×2、ブロンド少女は過激に美しく、フローズン、みつばちハッチ、シャングリラ、インセプション+製作ニュース
を尾行する青年を演じているのは、2007年の『ラスト、コー
ション』で主人公の同級生に扮したチュイ・チーインという
俳優だそうだ。
なお本作は、カイロ映画祭で撮影特別賞を受賞の他、NHK
主催のアジア・フィルム・フェスティバルではアンコール上
映作品にも選ばれている。
また今月末開催の「中国映画の全貌」では、2008年1月紹介
『胡同の理髪師』のドキュメンタリー版などが日本初公開さ
れる他、2007年3月紹介『ルオマの初恋』や、1994年『項羽
と劉邦』、2001年『思い出の夏』などが日本最終上映となる
ようだ。

『インセプション』“Inception”
2005年『バットマン・ビギンズ』、06年『プレステージ』、
08年『ダーク・ナイト』を発表したクリストファー・ノーラ
ン監督の最新作。
他人が就寝中に観る夢に侵入し、その相手が夢の中で構築す
るアイデアを盗み出す。そんな究極の産業スパイを描いた作
品。しかし物語はそれだけでなく、侵入した相手に別のアイ
デアを植え付け、それにより相手の行動をコントロールする
…という展開になる。
因に、題名のinceptionは辞書で引くと「初期の」という訳
語が出てくるが、本作の字幕では「植え付ける」と翻訳され
ていた。物語の中でも、初期の状態がやがて芽を出して行く
というような意味合いで使われていたようだ。
という物語の骨子は至極シンプルなものだが、そこに夢への
侵入を妨害する対抗策が設けられていたり、さらに深く夢に
侵入するための強力な鎮静剤、その鎮静剤の影響下で無理に
目覚めようとすると虚無界に転落するという設定など。
また、夢の中では時間が伸張されて実時間の20倍となり、さ
らに夢の中で夢に侵入するとそれが二乗される…などなど。
そんな設定が見事な映像で表現され、SFファンなら思わず
ニヤリとするシーンが満載の作品だった。
因に本作の予告編では、街路の先が上方に迫り上がって行く
という凄まじい画像が観られたが、これは正にコケ脅かし。
映画の本質では、さらに奥深くの人間の深層心理の問題など
が語られる。そしてそれは究極の選択を迫る問題にもなって
行く。
また本作では、一面では自殺の問題も描いているが、そこで
は自殺が物事の解決に繋がらないというメッセージも示して
いるように見えるものだ。
出演は、レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、エレン・ペイ
ジ、マリオン・コティアール。さらに、マイクル・ケイン、
トム・ベレンジャー。いずれもアカデミー賞を受賞あるいは
ノミネートされた錚々たる顔ぶれが揃えられている。
他には、『ロックローラ』のトム・ハーディ、『(500)日の
サマー』のジョセフ・ゴードン=レヴェット、『アバター』
のディリープ・ラオ、『バットマン・ビギンズ』のキリアン
・マーフィなど、正に曲者揃いの共演者たちだ。
なお、本作の結末はハッピーエンドか否か、議論は分かれる
ものと思われるが、僕はアンハッピーエンドと採る。その答
えは、エンディングクレジットにあると思えるからだ。

『死刑台のエレベーター』
今回の最初に紹介したフランス映画のリメイクが日本映画で
登場した。実は試写会の前に記者会見があって、その際のプ
ロデューサーの説明によると、世界各国でリメイクの計画が
あったが、本作の企画だけがルイ・マル監督の遺族の支援も
あって認められたそうだ。
本作の舞台は現代の横浜に変えられているが、物語の骨子は
ほぼオリジナルの通り、逆に言えば現代であの物語を成立さ
せるためのいろいろな工夫が凝らされている、とも言えそう
だ。そのための舞台が横浜であったりもする。
ただし本作では、オリジナルではほとんど語られていない各
登場人物の背景がそれなりに描かれており、オリジナルでは
刹那的にも見える若者の行動なども、それなりの理由付けが
されていたりもしている。
だが、記者会見で監督が言った「25歳の才気溢れる青年監督
が作り上げた作品を、50歳の中年監督がリメイクするとどう
なるか」という点で言えば、オリジナルの青臭さみたいなも

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07月11日(日)
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