ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460210hit]
■ミレニアム2/3、愛の言霊、シングルマン、GARO、おにいちゃんのハナビ、スプリング・フィーバー、REDLINE+他
監督は、テレビ『心療内科医・涼子』で民放連優秀賞を受賞
した国本雅広。脚本はテレビ『怪物くん』などの西田征史。
因に、国本は劇場用映画の監督は初めてだそうだが、演出は
そつなくこなしていた感じだ。
物語自体は難病物だが、そこからの展開が片貝まつりという
背景や、さらに引き籠りなどの要素も加えて見事に描かれて
いる。特に花火との関わり方は、元々がそこから始まった作
品だけに心を打たれるものになっていた。
さらに劇中で紹介される色とりどり、仕掛けも様々な打ち上
げ花火の見事さ。中でも直径800mにも及ぶとされる四尺玉
の豪快さ華麗さには、大画面で観るだけの価値があるとも言
えそうな作品だった。
なお主題歌を、藤井フミヤが書き下ろしで提供。また本作は
今年6月に開催された上海国際映画祭で「日本映画週間」の
オープニングを飾ったそうだ。
『スプリング・フィーバー』“春風沈醉的晩上”
2008年5月紹介した『天安門、恋人たち』のロウ・イエ監督
による2009年作品。
前作の2006年カンヌ映画祭での強行上映から5年間の映画製
作禁止処分を受けた監督が、その解除を待たず、正にゲリラ
的手法で中国の古都南京を舞台に撮影製作した作品。しかも
その内容では中国政府が忌み嫌うゲイの姿が描かれている。
何とも挑戦的な作品だし、それだけで話題性は充分といった
感じだが、物語の展開としては自然だし、特に最近のインデ
ィペンデンス映画の傾向から言えば特別なものではない。む
しろその物語が巧みに作られていたと言える作品だ。
開幕は、雑木林の中の小屋で激しく身体を求め合う2人の男
の姿。その2人が事を終えて帰ろうとしたとき、1人の男が
彼らとすれ違う。その男は町で私立探偵の様なことをしてお
り、彼は学校教師の女性の依頼で彼女の夫の浮気調査をして
いた。
こうして夫の浮気相手が男性だったという事実を知った女性
と、その夫、浮気相手、さらに探偵とその恋人も巻き込み、
様々な人間模様が描かれて行く。それは画一的な社会の中で
翻弄される人々の物語だ。
前作『天安門』の時も、歴史的な事件を背景にしながら、そ
こでの人間の普遍的な営みが描かれていたが、今回もゲイと
いう中国政府には受け入れられないテーマを扱いながら、そ
こに描かれるのは、ある意味、人としては自然な営みなのか
も知れない。
そんな本作は、センセーショナリズムと現実的な事物の捉え
方が巧みに融合された作品とも言えそうだ。脚本は、前作を
監督と共同で手掛け、本作でカンヌ映画祭の脚本賞に輝いた
メイ・フォン。
因に、イエ監督の最初のアイデアでは浮気相手はゲイではな
かったが、脚本家との議論の中でそのテーマが浮かんできた
とのこと。本作の主要な部分はこの脚本家によるところが大
きいようだ。
また脚本家は撮影現場に立ち会い、その場の雰囲気でどんど
ん手直しを行ったとのこと。さらに撮影には家庭用ディジタ
ルヴィデオカメラを使用し、オートフォーカスや自動露出も
利用して自由な撮影を行ったとのことで、そんな自然さが作
品にも現れている感じだ。
なお、出演者は日本に馴染みのない俳優が中心だが、監督は
彼らに、『真夜中のカーボーイ』と『マイ・プライベート・
アイダホ』を観せて作品への理解を求めたそうだ。
『REDLINE』
2003年に発表された短編9本からなる『アニマトリックス』
の内の1本を手掛けた小池健監督による長編アニメーション
作品。反重力装置によるエアカーが発達した未来世界を舞台
に、それでも4輪に拘わってレースを繰り広げる者たちを描
く。
未来のレースというと、実写作品でも『マッハ Go!Go!Go!』
から『デスレース』まで様々作られているが、異惑星の荒野
を背景にしているというところでは、『スター・ウォーズ:
エピソード1』を思い出す。
そのキャラクターを模したような異星人もいろいろ登場する
作品で、そのパロディというか、オマージュといった感じで
も作られている作品のようだ。でもまあ、主人公が思い寄せ
[5]続きを読む
07月04日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る