ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■P野ばら、ボローニャ…、瞬、上海アニメ、アリス・イン・ワンダーランド、ハーツ & マインズ、蜘蛛の拍子舞/身替座禅+製作ニュース
この中では、北ヴェトナム軍の捕虜から解放されてアメリカ
国内の戦意高揚のシンボル的存在だったジョージ・コーカー
元中尉や、ナパーム弾で大火傷を負ったヴェトナム人少女キ
ム・フックの姿なども写し出されている。
その他には、歴代のアメリカ大統領によるヴェトナム戦略に
関するアーカイヴ映像や、作品の製作時にはすでにアメリカ
が手を引くことが発表されており、それを踏まえた上でのそ
れぞれの立場の人物が過去を振り返っての証言などが綴られ
ている。
さらに1968年6月6日に暗殺されたロバート・F・ケネディ
が、その時に用意していたと言われるヴェトナムからの撤退
を求める演説の草稿を書いた人物や、南ヴェトナム政権下で
政治犯だった人たちの証言なども紹介される。
またこの作品は、その後の『ディア・ハンター』や『地獄の
黙示録』などにも影響を与えたと言われる通り、ハリウッド
がヴェトナム戦争を映像化するに当っての手本ともなってい
るもので、確かにそれらの作品に登場した「ヴェトナム」が
描かれていた。
ただ、その作品を製作から35年も経って観ていると、当時は
日本国内でも反戦運動などで関心を持っていたはずなのに、
その前後の時間関係などが判らなくなっていたりもして、今
やそれを思い出として観ている自分に気付いたことにも愕然
とした。
しかも今それを我々が観た場合には、ジョン・F・ケネディ
が大増兵を発表する映像などに、同じ民主党のオバマがイラ
クへの追加派兵を発表する姿が重なって、歴史に学ばないア
メリカの実像を観ている感じもしたものだ。
なお本作は反戦ドキュメンタリーとして著名な作品であった
が、日本での公開は過去に1度テレビで深夜に放送されたの
み。一時はヴィデオテープが日本発売されていたようだが、
それも廃盤になっていた。
今回は、その作品がアメリカで映画科学アカデミーが所蔵し
ていた35mmフィルムからHDによるリマスタリングされたも
ので、昨年2月に全米でも再公開されたノーカットのヴィデ
オが輸入されて、日本初の劇場公開が行われることになって
いる。

『蜘蛛の拍子舞/身替座禅』
4月末日で閉館される木挽町歌舞伎座のさよなら公演として
上演された2演目をハイビジョンで収録したシネマ歌舞伎の
第14作と第15作。東京では閉館翌日の5月1日から歌舞伎座
もよりの東劇で、その他の地区は15日からそれぞれ2本立て
で公開される。
『蜘蛛…』は、天皇の出家で空御所となった京都御所に現れ
るという物の怪を検分するため源頼光、渡辺綱、碓井貞光、
卜部季武の四天王が宿直するというもの。そこに刀鍛冶の娘
と自称する女が現れ酒宴などを行うが、その女が蜘蛛の化身
と判って…
この蜘蛛の化身を坂東玉三郎が演じて、最初は妖艶、後半は
隈取りをした化粧で立ち回りも演じる。さらにその間には、
大小3段階の蜘蛛の操りや着ぐるみが登場して、四天王や兵
士たちとの立ち回りが演じられる。
元々物の怪退治という筋書きなので興味深い演目だったし、
特に後半では玉三郎が次々に蜘蛛の糸を繰り出して、その映
像も華やかなもので大いに楽しめた。因に拍子舞とは演者が
自ら歌いながら踊る演目だそうで、それは前半に刀鍛冶の娘
と頼光らの掛け合いで観られる。
共演は、頼光に四代目尾上松緑、綱に五代目尾上菊之助。若
手のホープたちが頑張っている舞台でもあったようだ。特に
松緑は、父親の尾上辰之助、祖父の二代目松緑の生前の活躍
をテレビなどで観ていた自分には感慨深いものがあった。
『身替…』は、奥方に頭の上がらない大名が、旅先で知り合
った女から近くに来ているとの手紙を貰い、逢いたくて仕方
がない。しかし奥方も恐い。そこで大名は太郎冠者を呼び、
策略を使って奥方の目をごまかし外出に成功するが…
この大名を中村勘三郎、奥方を坂東三津五郎、太郎冠者を市
川染五郎が演じる。因にこの演目は、勘三郎の祖父と三津五
郎の曽祖父との共演で初演されたものだそうだが、特に勘三

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03月21日(日)
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