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On the Production
by 井口健二
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■第9地区、孤高のメス、フェーズ6、エンター・ザ・ボイド、ソウル・パワー、きな子、ヒーローショー
間行われたコンサートの合間にアーチストたちが地元の人々
と交流する姿など。コンサートを取り巻くものも網羅的に描
かれている。
そしてコンサートでは、B・B・キングやジェームズ・ブラ
ウン、さらにミリアム・マケバやザ・クルセイダースなど、
僕でも知っている往年のアーチストたちが次々に登場し、ま
た知っている曲も次々に演奏されていた。
個人的には、1960年代に『パタ・パタ』の大ヒットで知られ
るマケバの登場が嬉しかったが、1974年当時の彼女は過激派
黒人活動家との結婚でアメリカでは活動が出来なかった時代
のようだ。それでも特有のクリック音を響かせる歌声には感
激した。
その一方でアーチストたちが街に出て、地元の音楽家たちと
一緒に演奏するシーンや、集まってきた子供たちにリズムを
教えるシーンなども感動的だし、また舞台裏で若い女性のア
ーチストがアメリカで流行っている最新のダンスのステップ
を地元のダンサーに教えるシーンなどにも、本当に彼らが交
流を楽しんでいる雰囲気が伝わってきた。
3日間も行われたコンサートのシーンが正にハイライトとい
う感じで、その点では物足りない人もいるかも知れないが、
このコンサートのコンセプトがアフリカ系アーチストの帰還
ということでは本作はそのテーマに沿ったものだし、これで
良い作品だ。
後は、その膨大なコンサートシーンはDVDボックスにでも
して、世間に出して貰いたいと思うものだ。
『きな子』
地元のテレビ局の取材中に見事なズッコケ振りを見せてしま
ったことから、全国的に名前を知られることになった香川県
丸亀警察署の見習い警察犬を主人公にした作品。
映画の物語自体はフィクションで、かなりドラマティックに
作られているが、警察犬の仕事ぶりや訓練・コンテストの様
子などはそれなりに判りやすく描かれており、特に動物もの
としてはOKの作品と言えそうだ。
それに、現実の「きな子」がその後に置かれた状況には、映
画の中にも描かれている各種のキャンペーンに担ぎ出される
「きな子」の映像と併せて、いろいろ考えさせられる部分も
ある作品だった。
出演は夏帆、戸田菜穂、寺脇康文、山本裕典、平田満、広田
亮平、遠藤憲一、大野百花、浅田美代子。夏帆は、犬に食わ
れないだけの可愛らしさを今回も発揮しているし、広田、大
野の子役もしっかりとした演技を見せてくれている。
それから「きなこ」は幼犬時代を除いて本物が登場している
ようだが、肝心のズッコケのシーンがCGIなのはちょっと
残念。当時に取材されたテレビ映像があるはずだが、それは
使用できなかったのかな。
また、現実の「きな子」のいる訓練所が丸亀市飯野町で、主
人公の実家が土器川の近くということでは、そこに向かう際
に鳥坂は越えないはずだが…。実は映画の訓練所のセットは
三豊市に作られたそうで、それならと納得したところだ。
因に、鳥坂は丸亀市と三豊市の間にあって、そこで売られて
いるまんじゅうが地元では有名な場所。ついでにその近辺を
Googleマップで調べたが、鳥坂山というのはこの付近にはな
かったようだ。これもフィクションということになる。
監督は、2007年11月紹介『SS』の小林義則。本作が3作目
だがそれなりにそつ無くまとめている。脚本は、共に本作が
映画デビュー作の浜田秀哉と俵喜都。この内の浜田は香川県
の出身とのことで脚本には地元らしさもあるが、上記の点は
止む終えなかったのかな。
なお、警察犬の訓練・コンテストにはその他の課目もあるよ
うだし、訓練士の資格にもいろいろ階級などもあるようで、
その辺のことももう少し描いて欲しかった気もするが、基本
「きな子」ファンのお子様に見せる映画としてはこの程度で
充分の作品だろう。
『ヒーローショー』
2005年『パッチギ!』などの井筒和幸監督による2007年同作
の続編以来となる長編作品。その間には2008年11月に紹介し
た短編集『はじめは、みんな子供だった』の一編を監督して
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03月14日(日)
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