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On the Production
by 井口健二
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■幸福の黄色い…、グリーン・ゾーン、誘拐ラプソディー、スナイパー、川の底からこんにちは、てぃだかんかん、ねこタクシー、処刑人U
子供の頃から海が好きで、他のことは全て中途半端だった男
が、故郷の沖縄で海をテーマにした飲食店を開いて成功。し
かし観光客を引率してのダイビング中に、死滅して白化した
テーブル珊瑚を目撃したことから、飲食店を人手に渡して独
学で珊瑚の養殖と移植を開始する。
だがその行動は、その海で漁をする漁民や海岸の開発を進め
ようとする行政や業者の反発に遭う。それでも彼は、上等の
海を取り戻したいという一念で活動を進めて行くが…。そこ
にはいろいろな人々の思惑が関って、思いも掛けない展開と
なって行く。
出演は、主人公の金城氏に岡村隆史が扮し、その妻役に松雪
泰子、母親役に原田美枝子。他にテレビドラマ『動物のお医
者さん』など吉沢悠、『KILL BILL』などに出演の國村隼ら
が共演。また渡部篤郎、長澤まさみらが特別出演や友情出演
をしている。
監督は、2004年7月紹介『お父さんのバックドロップ』など
の李闘士男。以前の作品紹介の時は多少苦言を述べたが、基
本的には好きな作風の監督と言えそうだ。今回も主人公たち
を観る目が優しくて気に入ってしまった。
岡村は、テレビのレギュラーを務めながらの撮影だったとの
ことで、スケジュールの調整や沖縄の方言にはかなり苦労し
たようだが、元々の本人にも心酔していたようで、見事に填
り込んだ演技をしている。その岡村を囲む、松雪、原田らの
サポートも見事だ。
それにしても、金城氏本人は「周りの人を傷つけないで」と
言っている割りには、主人公を批判する学者や行政の描き方
はかなり強烈で、映画を観る前には岡村主演の気楽な作品か
と思っていたが、予想以上に厳しいシーンに思わず居住まい
を正してしまった。
恐らく現実はもっと厳しかったのであろうし、そんな逆風に
もめげずに偉業を達成した金城氏の活動に改めて感動してし
まったところだ。それにしても、この人たちは今どんな気持
ちでいるのだろうか、映画が名誉毀損にならないか少し心配
にもなった。
珊瑚の産卵シーンは初年度からこんなに大量だったのか、そ
の辺はちょっと疑問にも感じたが、幻想的なそのシーンは演
出上の嘘として容認したいところだ。

『ねこタクシー』
2007年4月『テレビばかり見ていると馬鹿になる』や、昨年
5月には『幼獣マメシバ』を紹介した亀井亨監督の新作。
2006年『イヌゴエ』『イヌゴエ幸せの肉球』、2008年『ネコ
ナデ』、2009年『マメシバ』と来て、2010年5本目となるイ
ヌネコシリーズだが、亀井監督自身は前作と『ネコナデ』の
テレビ版も手掛けているようだ。
何しろ小動物の可愛さが前面にあってそこから始まる物語。
小動物の愛くるしい姿さえ写していれば良いと思われる作品
だが、亀井監督の前作と本作ではちょっと社会性のあるテー
マも含まれて、作品に深みが付いてきている感じもする。
という本作の主人公は、前職をトラブルで退職し、タクシー
運転手になってから5年目という男。しかし小心者で人付き
合いが上手くなく、営業成績もなかなか上がらない。
そんな男がある日のこと、公園での休憩中に御大層な首輪を
付けた野良猫と出会い。その猫をこっそり助手席に乗せて営
業を開始すると…。猫を呼び水に乗客との会話も弾んで、営
業成績も上がり始める。
ところが、小動物を営業の手段とすることには動物愛護の面
(衛生面ではない)から問題があると指摘され、さらに運転
手本人の小動物の扱いに関する資格や、会社としての営業許
可も必要だと教えられる。こうして主人公の努力は水泡に帰
すかと思われるが…
この主人公にカンニング竹山が扮し、その妻役の鶴田真由、
ちょっと反抗期気味の娘役の山下リオ、同僚運転手役の芦名
星、甲本雅裕、猫婆役の室井滋、行政官役の内藤剛志、さら
に高橋長英、根岸季衣、それに主題歌も歌っている水木一郎
らが絡んで物語が展開されて行く。
2008年『ネコナデ』のときは、製作の意図は理解したが、社
会通念上で了解できない物語の展開にサイトでの紹介を取り
止めた記憶がある。

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02月28日(日)
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