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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション部門(1)
に、その男が治療を受けた医療企業の従業員や、男が出入り
するショッピングモールの警備員などが行き交うアンサンブ
ルドラマ。
題名は、初めて目が見えるようになった男性が、今までは聴
覚や触覚だけだった世界との違いに戸惑う姿に準えて、いろ
いろな登場人物たちの思惑の違う出来事が描かれて行く物だ
と解釈するが、正直に言って視力の回復した男以外の物語は
あまり目新しいものでもなく、ただ物語を煩雑にしているだ
けのように感じられた。
これならもっと視力の回復した男の物語に絞っていろいろな
エピソードを描いた方が良い作品になったと思われるが、そ
の男の物語も、見えていると恐怖に囚われるが目を瞑れば大
丈夫だなど常識的なものばかりで、結局その辺の考察にも欠
けているのだろう。
監督は、映画に登場するチリ南部の町ヴァルディヴィアの出
身で、4年間のイギリス留学の後に帰国して故郷の町の変貌
振りに驚き、この物語を構想したということだが、この作品
では肝心のその驚きが伝わってこなかった感じがする。
テーマ的にはこれで良いのだと思うし、シリアスをユーモア
で撮るという監督の考え方も理解はするが、通り一遍のコメ
ディではその思想も活かされない。テーマに沿って取材を重
ねれば、ユーモアは自然と産まれてくるものだと思う。
テーマは面白いし、その寓意性などももっと活かされるべき
作品だとは思うが、何かが全体的に足りない作品に思えた。

10月16日(金)
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