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On the Production
by 井口健二
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■第22回東京国際映画祭・コンペティション部門(2)+まとめ
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※このページは、東京国際映画祭での上映作品の中から、※
※僕が観て気に入った作品を中心に紹介します。    ※
※まずはコンペティション部門の上映作品の紹介です。 ※
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『エイト・タイムズ・アップ』
題名は「七転び八起き」の諺から取られたというどん底に追
い詰められた女性の姿を描いた作品。
主人公は定職もなく、家賃の滞納で住まいも追い出されそう
になっている30代前半ぐらいの女性。就活はしているが、実
は資格も持たず職歴もあまりなくては思うような仕事にはあ
りつけない。
そこで深夜のバスの清掃やベビーシッターなど、誰でもでき
る日雇いの仕事で生活を続けているが、その収入では家賃も
満足に払えず、しかもその賃貸契約も正規の物ではないから
追い立てに対抗することもできない。
だが、住む家を無くすと離婚して親権も取られた子供に会い
に行くこともできなくなる恐れがあり…
もしかしたらそれまでは夫に頼りきりで、このような事態に
なることの準備は全く考えてもいなかったのかな。でもそう
でなくても、自分自身が生涯勤めると思っていた職場から突
然の解雇通知を受けた身としては、今のご時世こんな人も多
いのではないかとも思ってしまう。
それでも将来に悲嘆して自殺を図ることもなく、一部にそこ
に近付いて行く描写はあるものの、全体的には題名通りの精
神で前進を続けて行こうとしている。
フランスのホームレスの話では、今年1月に『ベルサイユの
子』という作品も紹介しており、そのギョーム・ドパルデュ
ーが渾身の演技を見せたその作品ほどにはドラマティックで
はないが、静かな中にも決意が感じられる物語が展開されて
いた。
監督と脚本は、本業小説家というシャビ・モリア、長編映画
の監督は初作品のようだ。また主演のジュリー・ガイエが、
製作と共同脚本も手掛けている。

『ロード、ムービー』
以前には日本でも行われていた映画の移動上映を背景にした
インド映画。
主人公は父親の商売を継ぐことに嫌気が差しており、近所の
映画館の取り壊しで出た資材を運ぶ仕事を引き受けて町を出
ていこうとしている。そして、家族にも見送られて6日間の
予定の旅に出発するが、その荷台には父親から託された商品
も積まれている。
行程の大半はインドの砂漠地帯。そこでまず立ち寄ったオア
シスのカフェで、ウェイターの少年に一緒に連れて行ってく
れと頼まれる。その後、トラックがエンストして少年は半日
掛けて初老の整備士を連れてきたり、ジプシー女も加わって
旅は続いて行く。
その中では、地元警察に捕って「詰らなかったら首吊りだ」
とアラビアンナイトのように脅されながら上映をしたり、夢
のようなカーニバルに行き逢ったり、井戸の権利を巡る争い
に巻き込まれたり…題名の通りのロードムーヴィが繰り広げ
られる。
幻想的な白い砂漠など、異国情緒たっぷりの中で展開される
ユーモアもたっぷりの物語。映画の上映シーンではインドの
マサラ映画へのオマージュもたっぷりと描かれている。そし
て最後にはハロルド・ロイドとキーストンコップも上映され
ていたようだ。
映画の中で映画の上映される作品はいろいろあるが、映画フ
ァンにはどれも心を引かれる作品が多い。本作では断片的に
上映されるマサラ映画は、インドでは名作かも知れないが日
本では見たこともないものばかり、それでも楽しくなってし
まうのだから…それが映画の魅力でもあるのだろう。
オープニングのタイトルも面白かったが、エンディングには
各国の映画のエンドマークが集められ、中には「終り」とい
う文字も見えたようだ。ちらっとそのタイトルも見える。そ
んなことも楽しめ、全体が映画ファンの夢のような作品だっ
た。

『NYスタテンアイランド物語』
1998年『交渉人』などの脚本家ジェームズ・デモナコによる
初監督作品。

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10月17日(土)
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