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On the Production
by 井口健二
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■白夜、ファイナル・デッドサーキット、カールじいさんの空飛ぶ家、戦慄迷宮、アンヴィル、陸軍中野学校、スワップ・スワップ+他
それはちょうど彼らにヨーロッパツアーの話が届いていたと
きだった。ところが…
そのコンサートツアーには、そこにレコード会社のスカウト
が来ないかという期待も孕むが、結果はギャラも満足に貰え
ない有り様。さらには大枚をはたいてニューアルバムの製作
にも踏み切るが、それも大手レコード会社からは拒絶されて
しまう。
ヘヴィメタだからハチャメチャな人生を送っているかと思え
ば、そんなことはなくて、実生活はむしろ実直なものだ。し
かしいつまでもバンドを捨てない彼らには、家族や親族にも
反対の声があったり、それでも理解者もいたり…そしてそこ
には微かな光明も観えてくるのだが…。
作品を観た直後のダスティン・ホフマンが、目に涙を浮かべ
ながら監督に絶賛の声を掛けたそうだが、実際、僕も作品の
クライマックスには涙が流れるのを止められなかった。
ドキュメンタリー監督の問題児マイクル・モーアも脱帽した
というこの作品には、50歳になっても夢を捨てない彼らの人
生やそれを支える友情や愛情が見事に描かれている。そして
そんな彼らの真実の姿が、信頼する監督の手で見事に写し出
されている。
『陸軍中野学校』
前回紹介した「大雷蔵祭」で上映される内の1本。1966年か
ら68年に5作品が製作された人気シリーズの第1作。
第2次大戦前夜、支那事変が勃発した頃の物語。主人公は早
くに父親を亡くし、母親の女手一つで育てられた青年。そし
て東京帝大を卒業した今、彼には婚約者もいて、召集された
2年間の軍務が終了すれば、晴れて結婚して幸せな家庭を築
くはずだった。
ところが軍務に着くやいなや、彼には極秘任務として他17名
の陸軍少尉らと共に九段の靖国神社に集合することが命じら
れる。そして家族には行先不明の出張と言い置いて集合した
彼らには、家族や名前や将来の希望も捨ててスパイになるこ
とが要請される。
一方、残された婚約者は突然所在の判らなくなった主人公の
姿を探し求める。そして何処に問い合わせても埒が開かない
と気づくや、津田塾を出てタイピストの技能も持つ彼女は参
謀本部に職を求め、そこで軍事機密にも近づく機会を持ち始
める。
この主人公を市川雷蔵が演じ、婚約者には小川真由美が扮し
ている。他に加東大介、待田京介、E・H・エリックらが共
演。脚本は、後に第102回の直木賞を受賞する星川清司、監
督は『兵隊やくざ』などの増村保造が手掛けている。
製作された1966年は、1962年にスタートした007シリーズ
の亜流作品も全盛期の頃と思われるが、本作はそれとは少し
目先を変え、実在した日本陸軍のスパイ養成機関を題材に、
その第一期生の姿を史実に沿って描いている。
因に映画の中では、スパイ活動の先達として対露政治謀略工
作で日露戦争を勝利に導いたとされる明石元二郎陸軍大佐が
挙げられ、軍部による開戦気運が高まる中でスパイ活動が戦
争の抑止のために機能すると講義がされているが、これも事
実に沿ったもののようだ。
そして映画は、第一期生がさまざまな苦難の末に卒業試験と
される任務を全うし、世界の各地に旅立って行くまでを描く
が、特に主人公のそれはもちろんこの部分はフィクションで
あっても、なかなか興味深い展開になっていた。
2年で5作品も作られたプログラムピクチャーではあるし、
上映時間96分ではそれほどのコクのある作品ではないが、最
近の日本映画が失った何かがここにはあるような、そんな感
じのする作品でもあった。
『スワップ・スワップ』“American Swing”
1970年代後半のニューヨークで物議を醸した夫婦交換クラブ
Plato's Retreatの興亡を描いたドキュメンタリー。
1968年にニューヨーク郊外Woodstockで開催されたロック・
フェスティヴァルは、アメリカにドラッグとフリーセックス
時代の到来を告げ、ニューヨークではそんな時代に呼応する
伝説的なクラブが注目を浴び始める。
その中でも異彩を放ったのが、1977年9月に開店したその名
も「プラトンの隠れ家」と名付けられたクラブだった。そこ
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09月06日(日)
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